第56回日本作業療法学会

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[PN-9] ポスター:地域 9

2022年9月17日(土) 13:30 〜 14:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-9-6] ポスター:地域 9看護小規模多機能型居宅介護における作業療法士の遠隔介入の試み

秋元 美穂1坂本 俊夫1富田 義人2 (1東京保健医療専門職大学リハビリテーション学部 作業療法学科,2東京保健医療専門職大学リハビリテーション学部 理学療法学科)

【序論】 看護小規模多機能型居宅介護(以下,看多機)では,高齢者が医療・介護サービスを利用して住み慣れた地域で最後まで暮らし続けるためのサービス提供が求められる.利用者には認知症者も多く,対応が多岐にわたる現状がある一方で,事業所の規模によっては人手不足もあり認知症ケアに関する専門的な研修等へ必要に応じて職員を派遣することは困難な現状がある.
【目的】 本研究の目的は,看多機における作業療法士(Occupational Therapist: OT)への要望を明らかにすることである.
【対象と方法】 対象は,看多機の介護職員4名(常勤2名,非常勤2名)で2021年8月から2022年1月まで週1回程度,関わった.方法はタブレット端末でオンライン会議ツールZoomを利用し,遠隔にて認知症ケアに対する支援を行い,管理者と介護職員にアンケートを行った.なお,本学の倫理研究委員会で承認を受け,対象者に説明と同意を得た.
アンケートは,令和元年度 認知症患者及び家族支援における認知症看護認定看護師の活用に関する調査研究事業 記録用紙別紙2-1,2-2,3を使用した.
【結果】 
1. OTは,業務終了時に介護職員のケアについて「疾患の特性に合ったケアが行えている」,「利用者の経過をみて介護職員のケアが利用者に良い変化をもたらしたのではないか」等,ポジティブなフィードバックを行った.この支援に対して,介護職員は「疾患の特性に合ったケアを自分達ができていると初めて知った」「利用者の経過をみることで自分たちのケアが利用者にどのように影響したのか理解した」と述べた.
2.OTによる支援で有効な結果は,管理者・介護職員ともに「作業療法士の理解度」であった.また,管理者は「認知症ケアへの不安の軽減」や「認知症ケア力の向上」等だったのに対し,介護職員は「利用者の認知症状の軽減」「認知症・BPSDに関する知識の向上」「認知症ケアへの自信の向上」「利用者のケアに関する時間の短縮」であった.現在の対応状況に対し,ほとんどが「作業療法士からの支援があれば対応できる」と答えた.
3.管理者には認知症ケアに関する普段の取り組み状況について,介護職員には認知症ケアの変化について17の質問に対し4検法で聞いた結果,管理者とケアマネージャーの資格を持つ介護職員は「3.あまりそう思わない」との返答が多かった一方で,介護職員は「1.とてもそう思う」「2.まあそう思う」との返答が多かった.
4.管理者の事前調査で,OTからの支援希望5項目全てに期待していたが,介入後「あまり解決できていない」と返答した.
5.介護職員は自由記載欄で「相談しやすく的確な助言をもらえた」「助言されたことを共通認識で取り組むことが難しかった」「週1ではリアルタイムの相談が難しかった」と返答した.
【考察】
 本研究によって,看多機におけるOTの役割は,管理者と介護職員が持つ認知症ケアへの不安解消であると予測された.そこで,利用者の症状に合わせた実践的な助言をミーティングの中で行った結果,介護職員は現場で即実践し「利用者のケアの時間短縮」等に繋がったのではないかと考える.
 また,管理者のOTや介護職員への要望は高いが,多忙な介護職員の業務内にOTが全てを応えるためには,継続して事業内の問題点を整理し,疾患を絞った利用者への介入方法の提案を段階的に行う等の工夫で改善していく可能性はあるのではないかと考える.