第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

脳血管疾患等

[OA-15] 一般演題:脳血管疾患等 15

2023年11月12日(日) 09:40 〜 10:40 第3会場 (会議場B1)

[OA-15-2] 急性期および亜急性期の脳卒中における短期間および長時間のCI療法の効果

日高 晟子1,2, 徳田 和宏1, 海瀬 一也1, 竹林 崇2, 藤田 敏晃3 (1.阪和記念病院リハビリテーション部, 2.大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科, 3.阪和記念病院脳神経外科)

【はじめに】Constraint-induced movement therapy (CIMT)は,脳卒中後の上肢運動麻痺に対する介入方法の一つである.その効果について,慢性期では示されているが急性期または亜急性における有効性については証明されていない.しかし,急性期において1日の練習時間が比較的短時間のいくつかの研究ではCIMTの有効性が示されている.従って,脳卒中発症から2週間を目処に,急性期と亜急性期を明確に定義し,CIMTの効果を正確に解釈するための体系的な評価が必要といった現状がある.
【目的】急性期または亜急性脳卒中の上肢運動麻痺に対する1日の練習時間が2時間以下および2時間より多い時間のCIMTの効果を検証すること.
【方法】本研究は事前にPROSPEROへの登録を完了している.データベースには,PubMed,MEDLINE,CINAFL Plus with Full Text,Scopusが含まれた.検索式は (脳卒中/CIMT/ランダム化比較試験)といった内容の英語を使用した.本研究は2021年4月以前に発表された研究を対象とし,包含基準は(1) 成人患者 (18 歳以上) を含むランダム化比較試験(2)CIMTを用いた介入を受けた群および従来のリハビリテーションを受けた対照群の対象者(3) Fugl-Meyer motor assessment of the arm(FMA), Action research-arm test(ARAT), Motor activity log (MAL) のAmount of use (AOU) およびQuality of movement(QOM)の何らかの評価を含む研究(4)介入前後の変化量または平均値および標準偏差のデータが得られたもの(5)参加者が脳卒中後6ヶ月未満の急性期または亜急性期であること(6)英語で発行されたもの,とした.除外基準は,(1)介入群または対照群において,CIMTと他の療法を併用していた場合(2)対照群にて従来のリハビリテーション以外の特別な介入を実施していた場合(3) 非ランダム化比較試験,とした. 研究の質は,理学療法エビデンスデータベース(PEDro)スケールにて評価した.メタアナリシスでは, CIMTと従来のリハビリテーションを比較し,サブアナリシスとしてCIMTを実施した時期を脳卒中発症から2週未満および2週以降に分類した.さらに,1日のCIMTにおける練習量を2時間以下(Low-CIMT),2時間より多く(Hi-CIMT)に分類した. 統計学的分析では,標準平均差の95%信頼区間を算出した.用いる結果の変数として変化量とその標準偏差を用いた.
【結果】検索された論文は753件であり基準を満たした論文は10件であった.CIMTの効果はFMA,ARAT,MALを用いて評価された.PEDroスケールは4点から7点の範囲であった.メタアナリシス全体ではFMAとMAL-AOUのみ有意差を認めた(p=0.01).サブアナリシスでは発症2週未満のLow-CIMTにてFMA,ARAT,MAL-AOU,MAL-QOMで有意差を認めた(P<0.01).発症2週以降のLow-CIMTはFMAのみ有意差を認めた(P<0.01).発症2週以降のHi-CIMTではMAL-AOU,MAL-QOMに有意差を認めた(P=0.001 ,P=0.009).なお公開バイアスはファンネルプロットから左右対称性が保たれていた.
【考察】急性期から亜急性期におけるLow-CIMTにて上肢機能に対するおおよその効果は確認できた.ただしHi-CIMTでは十分な効果を示唆する結果は得られなかった.上肢の使用行動については,急性期のLow-CIMTおよび亜急性期のHi-CIMTのみ効果が確認できた.ただし対象となった論文が少なく,その有効性を十分確認できなかった可能性がある.本研究の限界として,介入の短期的な有効性のみを比較したこと,サンプル数が少なく信頼性のある結果が得られていない点が挙げられる.今後,多くのランダム化比較試験が実施され,より精度の高い分析を行うことが望ましいと考えられる.