第57回日本作業療法学会

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一般演題

神経難病

[OE-1] 一般演題:神経難病 1

Fri. Nov 10, 2023 3:40 PM - 4:50 PM 第5会場 (会議場B2)

[OE-1-2] パーキンソン病者の自宅での余暇活動時間に影響を与える非運動症状は何か?

関本 充史1,2, 鈴木 由美1,5, 高畑 進一3, 由利 禄巳4, 藤井 浩美1,5 (1.山形県立保健医療大学大学院保健学研究科, 2.株式会社リニエL, 3.京都橘大学健康科学部作業療法学科, 4.森ノ宮医療大学総合リハビリテーション学部作業療法学科, 5.山形県立保健医療大学作業療法学科)

【はじめに】パーキンソン病(PD)は安静時振戦,固縮,無動,姿勢反射障害などの運動症候がみられ,非運動症状は,自律神経症状,認知症など精神症状が多い.筆者らは在宅訪問で,PD者やその家族が非運動症状を見逃していることに気づいた.その中で,本人やその家族は転倒リスクを軽減するために,趣味を諦め,家庭内での役割を早期から抑制する傾向があった.先行研究では,非運動症状は日常生活,社会参加,人生の質(QOL)に影響を与えると述べている.そして,作業療法士(OTR)は,余暇活動がQOLを維持する上で重要であることを知っている.そこで本研究の目的は,PD者の余暇活動の妨げとなる非運動症状を見出すこととした.そして,OTRのPD者や家族へのフィードバックや日常生活上の工夫の提案により,PD者の余暇活動が長期的に継続できると仮定した.本演題に関して,開示すべきCOIはない.
【対象と方法】対象は株式会社リニエLの訪問看護事業,PD特化型通所介護事業を利用するPD者205名中,Hoehn-Yahr ⅢでJapanese version of Montreal Cognitive Assessment (MoCa-J)が21点以上で,この調査に同意の得られた30名(男10名,女20名;年齢56~85歳,73.8±7.5歳)であった.PD者に,直近1ヶ月間の義務的活動及び余暇活動の時間とその内容を調査した.基本情報は,年齢,性別,介護度,診断後の経過年数,障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とした.服薬情報は,Lドパ換算用量(L-dopa equivalent daily Dose,LEDD)を用いた.非運動症状は,Japanese version of Non-motor Symptoms of Daily Living of the Movement Disorder Society Unified Parkinson's Disease Rating Scale (MDS-UPDRS)のPart1,老年期うつ病評価尺度(GDS-15),MoCa-J,やる気スコアの検査を用いた.統計学的解析は,マン・ホイットニーU検定およびスピアマンの順位相関係数を用いた.加えて,ROC解析を行った.水準は5%とし,必要に応じて多重比較で補正した.この調査は,株式会社リニエR研究倫理委員会(承認番号:2032)の承認を得た上で実施した.
【結果】余暇活動時間とMDS-UPDRS 得点は,負の相関 (r = −0.372,p = 0.043) があり,下位項目の抑うつ気分 (r = −0.387,p = 0.034) ,不安感 (r = −0.439,p = 0.015) の項目に負の相関があった.余暇活動時間とLEDDには負の相関(r = −0.389,p = 0.033)があり,義務的活動時間と余暇活動時間(r = −0.520,p = 0.003),年齢(r = −0.553,p = 0.002)には,それぞれ負の相関があった.他の結果は,余暇活動時間と関連がなかった.ROC解析によって,余暇活動時間とMDS-UPDRS得点のカットオフ値は,月当たり60時間,9点であった.
【考察】余暇活動時間とMDS-UPDRSの関係から,余暇活動を妨げる非運動症状が抑うつ気分と不安であることを示唆する.余暇活動時間とLEDDの関係から,Hoehn-Yahr ⅢのPD者は,薬を増やさないと徐々に日常生活活動が低下することを示唆する.義務的活動時間と余暇活動時間の関係は,在宅PD者が非運動症状や運動症状によって,義務的活動に費やす時間の増加につながっていることを示唆する.抑うつ気分や不安は義務的活動にも影響するものの,精神的エネルギーの減衰が余暇活動に向かう気力を削いでいる可能性がある.今回は,Hoehn-Yahr Ⅲの在宅PD者の余暇活動時間に影響を及ぼす非運動症状を把握した.そして,余暇活動時間から非運動症状との関連の把握が可能であると分かった.この先は,Hoehn-Yahr Ⅲの余暇活動の内容と非運動症状との関連を調査するとともに,Hoehn-YahrⅠやⅡのPD者についても調査したい.