第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

発達障害

[OI-2] 一般演題:発達障害 2

2023年11月10日(金) 15:40 〜 16:50 第4会場 (会議場B5-7)

[OI-2-6] NICUに入院する超低出生体重児に対する早期作業療法

渋間 勇人1, 森 直樹2, 松内 祥子3, 青木 倉揚3, 赤羽 和博3 (1.済生会山形済生病院リハビリテーション部, 2.山形県立保健医療大学作業療法学科, 3.済生会山形済生病院小児科)

【背景】Neonatal Intensive Care Unit(NICU)に入院する超,極低出生体重児の発達予後は決して良好とは言えず,NICU入院中からの早期リハビリテーションは重要とされている.新生児が示す多様な自発運動のなかでもGeneral Movements(GMs)の観察評価であるGeneral Movements Assessment(GMA)は,信頼性の高い評価法として確立されている(Prechtl, 1990).GMAの半定量化の試みとしてGeneral Movements Optimality Score(GMOS)が使用されている(Einspieler C, 2016)が,GMOS使用には高度なトレーニングコースでの認定が必要である.近年,GMA初心者でも使用できるように,新たにGeneral Movement Checklist(GM checklist)が作成された(C.Y. Aizawa, et al., 2021).現在,GM checklistに関する研究では,GMOSと同等以上の評価者間信頼性を有する可能性があると報告されている (C.Y. Aizawa, et al., 2021).GM checklistは治療的介入の指標として使用されることが期待されているが,臨床上実践された報告はなく,GM checklistを使用した早期作業療法に関する報告はない.今回,早期作業療法による新生児の自発運動の縦断的な変化をGM checklistを用いて確認できたため以下に報告する.
【方法】研究デザインは単一事例研究.対象は,NICUに入院した男児.在胎週数24週2日,出生体重624g,分娩様式は帝王切開,Apgar score1分値1点,5分値2点,10分値6点,15分値8点.合併症として,呼吸窮迫症候群,慢性肺疾患を認めた.修正28週にリハビリテーション依頼があり作業療法を実施した.評価はGM Checklistを使用した.GM Checklistの使用に関しては,作成者であるC.Y. Aizawaより許可を得た.評価者はGM-trustにより認定を受けた作業療法士とした.評価方法は,Prechtl GMAに従った方法(Einspieler C, 2014)によりビデオ撮影を実施し,撮影したビデオを用いてGM checklistを評価した.GM checklistは最高スコア25点,最低スコア0点で評価し,総合的に正常なGMsを①normal,異常なGMsを②poor-repertoire (PR),③cramped-synchronized ,④chaoticの4種類で判定した.評価時期は,修正36,40,44週時に実施した.作業療法は,評価したGM Checklistを使用し,自発運動の質に応じて実施した.倫理的配慮は,対象児の保護者に対し,口頭ならびに文書にて十分な説明を行い,保護者から文書にて同意を受けた.
【経過および結果】修正36週時はGM checklist 10点で,総合的な判定はPRであった.修正36週時のGMsの特徴として,回旋動作が少なさや動作の急速さを認めたため,姿勢保持の安定性を高める目的で屈曲姿勢保持を中心とした発達促進運動を実施した.修正40週時はGM checklist 14点で,総合的な判定はPRであった.運動の複雑さや流暢さを認めなかったため,運動方向の多様性を促すように発達促進運動を実施した.修正44週時はGM checklist 25点で,総合的な判定はNormalで正常なGMsを認めた.結果,修正36,40,44時のGM checklistの点数は順に,10,14,25点,となり運動の質が改善した.
【考察】GMOSは新生児介入の短期的な神経学的転帰を評価するために使用されている(Raith W, 2015).GM checklistによる定期的な評価は,詳細な運動の変化を半定量的に評価することができるため,各時期に運動の質に応じた作業療法を実施できると考える.
【結論】GM checklistを用いた評価は,児の自発運動を半定量的に評価し,適切な発達支援の開始に有用である可能性がある.新生児期の作業療法は対象児の将来像が不明確である場合が多く,GM checklistを用いた半定量的な評価は,児の自発運動に応じた適切な支援を促すことにつながると考える.