第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

発達障害

[OI-4] 一般演題:発達障害 4

2023年11月11日(土) 14:50 〜 16:00 第4会場 (会議場B5-7)

[OI-4-4] 知的障害区分の特別支援学校における学校コンサルテーション

原田 瞬1,5, 立山 清美2, 倉澤 茂樹3, 丹葉 寛之4, 中岡 和代2 (1.京都橘大学健康科学部作業療法学科, 2.大阪公立大学リハビリテーション学研究科, 3.福島県立医科大学保健科学部作業療法学科, 4.関西福祉科学大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法専攻, 5.大阪府立大学総合リハビリテーション学研究科)

【序論】特別支援教育が始まり15年が経つが,日本では学校に勤務する作業療法士(以下OT)はまだ少なく,外部専門家としてOTが学校に訪問し,単発もしくは数回のコンサルテーション(以下コンサル)によって対象児童生徒へ間接的な支援を行う『学校コンサル』が主流となっている.学校コンサルについての臨床介入研究や実践モデルは十分示されておらず,実践報告や少人数を対象とした試験的な研究に留まっている(山口ら,2018).知的障害区分の特別支援学校(以下支援学校)は在籍児童生徒数が増加傾向にあり(文部科学省,2018),OTによる学校コンサルの効果を客観的に示すことが,学校教育領域への参画促進のために重要な課題と言える.そこで,支援学校の児童生徒を対象とした一定のプロトコルに基づいた学校コンサルの効果検証を目的に本研究を実施した.
【方法】研究デザインは1群前後比較研究とし,支援学校2校の小中学部で実施した学校コンサルの児童生徒15名を対象とした.プロトコルは対象児童生徒1名につき3回のコンサルで構成され,初回コンサル時に相談内容に基づく児童生徒の評価を行い,教員と3つの課題を決定した.Goal Attainment Scaling (以下GAS),児童生徒の現状と支援内容をまとめた支援共有シート(A4サイズの表)をOTが作成し,初回から約1週間後の2回目のコンサルで教員と共有して介入開始とした.介入期間は3ヵ月間とし,介入期間の中間で経過確認と支援内容調整のための3回目のコンサルを実施した.介入期間終了時に教員と特別支援コーディネーターがGASを用いて児童の目標達成度を判定し,筆頭著者がマニュアルに従ってTスコアを算出した.介入前後で教員が異常行動チェックリスト(以下ABC-J)を記入し,GASのTスコアと共に効果指標とした.なお,GASと支援共有シートについては学校コンサルの経験があるOT5名で内容を確認,修正し,標準的な支援内容を担保した.分析にはウィルコクソンの符号付順位和検定を用い,効果指標ごとに前後比較した.有意水準は5%未満とし,統計解析にはSPSS Statistics Ver.27を用いた.本研究は筆頭著者の所属機関の研究倫理委員会の承認のもと,対象児童生徒の保護者および教員の同意を得て実施した.
【結果】コンサルの途中で服薬調整があった1名を除く児童生徒14名(平均8.7±2.1歳)が分析対象となった.教員からの相談は問題行動,日常生活動作,姿勢・粗大運動に関するものが主であった.GASで判定した介入後のTスコアの平均は62.3±6.8となり,介入前のTスコアと比較して有意に向上した(p<0.001).1名はTスコアが50未満であったものの,その他のケースで個別の目標達成に対する高い効果がみられた.また,ABC-Jの総スコアは介入前36.6±21.7から介入後33.1±21.3となり,問題行動の程度が有意に改善した(p=0.042).さらにABC-Jの下位項目においては,無気力において有意な改善がみられた(p=0.044)
【考察】支援学校におけるOTの学校コンサルがGASで設定した個別の目標達成に寄与することが示された.GASは多様なニーズに対応するOTの効果指標として有用と報告されており(Lannin,2003),個別性の高い学校コンサルにおける効果の蓄積に適したツールと考えられる.今回使用したGAS,支援共有シートは作成に時間を要するというデメリットがあるが,文面で残すことで具体的な支援内容の共有や引き継ぎが容易となり,担任以外の教員が児童生徒に関わることも多い支援学校という体制において有効に働いたと考えられる.OTによる学校コンサルの実施形態は地域差が大きい現状にあるが,ある程度統一されたプロトコルにより,結果が集積されるような形態で実施されることが望まれる.