第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

発達障害

[OI-4] 一般演題:発達障害 4

2023年11月11日(土) 14:50 〜 16:00 第4会場 (会議場B5-7)

[OI-4-6] 発達障害児における箸の自助具選択のための早見表の作成

大川 綾佳1, 飯島 里佳子2, 佐野 陽南子3, 野村 悠香里4, 山口 佳小里5 (1.さいたま市はるの園, 2.LITALICOジュニアつくば教室, 3.国際医療福祉大学成田病院リハビリテーション技術部, 4.成田市こども発達支援センター, 5.国立保健医療科学院)

【序論】
 就学前児の発達課題として箸の使用が挙げられる.幼稚園・保育園で使用機会が多くなり保護者のニーズも高まるが,発達障害児は運動発達の遅れや手先の不器用さなどにより獲得に困難を生じることが報告されている.これに対し,作業療法では自助具の提案や手指機能の向上を目指したプログラムを実施するが,箸操作の獲得に関しては知見が十分に整理されていない.また,発達障害領域では作業療法士が直接対象児に関与できる機会が限られており,作業療法士による直接的な支援に加えて,日々の生活の中で児と接する機会の多い保育士や児童指導員,保護者との関わりが重要となる.
【目的】
 本研究では,児の手指の発達段階に応じて使用可能な自助具と手指機能向上を目的としたプログラムを整理し,早見表を作成した.これにより,作業療法士のみならず,他職種が箸操作獲得に向けたアプローチを実施する際にも活用できる.
【方法】
 経験年数1~20年の作業療法士,計10名のグループによる検討ならびに合意に基づき,箸使用のための自助具について発達段階別に整理した.手指機能の発達を,手指の運動発達ならびに道具使用に関する発達段階を踏まえて,4段階(①集団屈曲・集団伸展可能,②母指と示指の分離運動可能,③5指の分離運動可能・静的3指握り,④5指の分離運動可能・動的3指握り)に設定した.自助具については,市販のものや作業療法士が作成したものなど,臨床場面で実際に使用されるものを選定した.それらについて,使用方法ならびに期待される効果から,4段階の発達段階のうち相当する段階に分類した.また,自助具の活用と並行して手指機能向上訓練が必要と考え,実施できる遊びのプログラムも段階別に分類した.なお,本研究実施にあたっては,参加した作業療法士ならびに所属施設の同意のもとで実施した.
【結果】
 合計12個(市販11個,作業療法士作成1個)の自助具が選定された.発達段階①から順に,該当数は1個, 5個,5個,1個となった.段階①には箸同士が連結されており,握る動作のみで操作が可能なもの,段階②はバネで2本の箸同士が連結され,箸を閉じる操作のみ自分で行う必要のあるものが分類された.そのうち1つには,握りのサポートがあった.段階③は箸を開閉する操作を必要とし,2本の箸同士が連結かつリングによる指のポジショニングサポートがあった.段階④は普通箸であった.箸練習と並行して実施する手指機能向上のための遊びのプログラムに関しては,発達段階①から順に,その該当数は7個, 5個,10個,0個であった.段階④(普通箸)をゴールととらえていたため,今回は段階④に対応する遊びプログラムは検討しなかった.
【考察】
 早見表において,段階②と③に分類されたものが多かった.段階③については,手指機能のレベルによってさらに細かく分類できる可能性がある.段階④で普通箸レベルに到達した後も操作の習熟度に応じてさらなる段階付けが必要であると考える.また,次の段階へ移行するための指標があると保護者や他職種も使用しやすいと考えられるため,今後は各段階の評価基準についても検討する. さらに,作業療法士ならびに他職種に作成した早見表を実際に活用してもらい,必要に応じて改良することが必要である.