第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

高齢期

[OJ-3] 一般演題:高齢期 3

2023年11月11日(土) 14:50 〜 16:00 第2会場 (会議場A1)

[OJ-3-4] 回復期リハビリテーション病棟患者における入院時食事摂取方法が退院時ADLに及ぼす影響

西川 葵1, 木山 喜史1, 辻 優布子1, 李 範爽2 (1.医療法人尚豊会 みたき総合病院, 2.群馬大学大学院保健学研究科)

【はじめに】
回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)に入院する患者の栄養状態はADL帰結や在宅復帰に影響を与える要因の一つである.近年,施設独自の栄養基準を設けたり,入院初期の栄養状態を踏まえた予後予測を行ったりする取り組みが広く行われている.後者においては入院時栄養状態から退院時ADL自立度を予測する重回帰モデルが多く報告されているが,必ずしも満足できる予測精度が得られていないのも実情である.我々は食事摂取方法を考慮しない重回帰モデルの運用がその一因であると考える.そこで本研究では,栄養状態を示す指標に加え,食事摂取方法を取り入れた重回帰モデルを構築,その有用性を検討した.
【方法】
対象は2022年1月から2023年1月の間に当院回リハ病棟に入棟した患者157名であった.入院時のデータとして,基本情報(年齢,性別,算定疾患),栄養に関する5項目(Body Mass Index,Alb,Geriatric Nutritional Risk Index: GNRI,ストレス係数,活動係数),食事摂取方法,退院時のデータとしてADL指標(Functional Independence Measure: FIM)を収集した.食事摂取方法は日本摂食嚥下リハビリテーション学会が策定した嚥下調整食分類2021を当院提供の食形態に合わせて改変した6段階分類法を用いた(1:経管栄養,6:常食).独立変数として入院時指標を投入し,退院時FIMを従属変数としたステップワイズ法による重回帰分析を実施した.統計処理にはSPSS Ver. 25.0を用いた.本報告に際し,当院倫理審査委員会の承認を得,個人情報保護に配慮した.
【結果】
対象者の平均年齢は78.4±10.6歳,男性55名,女性102名であった.重回帰分析の結果,食事摂取方法(β=0.442,p<0.001),活動係数(β=0.236,p<0.001),GNRI(β=0.202,p<0.001)が退院時FIMに影響を与える因子として抽出され,調整済みR 2は0.450であった.退院時FIMの予測式は,-68.479+(11.314×食事摂取方法)+(41.076×活動係数)+(0.518×GNRI)であった.
【考察】
 退院時ADL自立度を予測する因子として入棟時の食事摂取方法,活動係数,GNRIが抽出された.特に,食事摂取方法が最も強く影響を及ぼす因子であることが明かになり,的確な予後予測のためには従来の栄養データだけでなく,食事摂取方法をも踏まえた包括的な評価が重要であることが示唆された.