第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

地域/MTDLP

[ON-3] 一般演題:地域 3/MTDLP 2

2023年11月10日(金) 14:30 〜 15:30 第4会場 (会議場B5-7)

[ON-3-5] 生活行為向上マネジメントによる訪問リハビリテーションが地域在住高齢者の生活行為に及ぼす影響

山田 剛史1, 追杉 幸子1, 務台 均2 (1.鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院地域医療部 訪問リハビリテーション科, 2.信州大学大学院医学系研究科)

【はじめに】
訪問リハビリテーション(訪問リハ)の地域在住高齢者への介入は,身体機能に偏り,活動と参加への介入が不十分であり,個人の状態や希望に基づく適切な目標の設定とその達成に向けた個別性を重視した適時適切なリハが計画的に実施されていなかったのではないかとの指摘がある.そこで,地域在住高齢者に対して,生活行為向上マネジメント(MTDLP)を用いて対象者の希望する生活行為を目標とした訪問リハを実施し,心身機能,生活行為およびQOLへの影響を検討した.
【対象と方法】
対象は介護認定され訪問リハを実施した65歳以上の高齢者とした.介入は従来の訪問リハにMTDLPを用いる方法で実施した.訪問リハ初回から2週間以内に各種の初回評価と, MTDLPを用いて対象者の希望する生活行為に関する合意目標の設定および介入プログラムを策定し介入を開始した.評価は3か月,6か月に実施した.評価横目ははShort Physical Performance Battery(SPPB),Mini Mental State Examination-Japanese (MMSE-J),Barthel Index(BI)とFrenchay Activities Index(FAI),日本語版EuroQol-5dimention-5Level(EQ-5D-5L),生活行為の実行度・満足度を使用した.解析方法は,全評価項目について,初回と3・6か月の変化量の比較を今回介入したMTDLP群17例に対して行った.BIとFAIについては,対照群を過去に訪問リハを実施した274名からMTDLP群と傾向スコアマッチングし,抽出された15名ずつを用いて,初回と3・6か月の変化量の差の群間比較も行った.前後の変化量の比較,群間比較ともに一般化線形混合モデルを用いた.尚,本研究は当該施設の倫理委員会の承認を得て実施した.MTDLP群の対象者からは文書による同意を得,対照群の対象者にはオプトアウトにて情報公開を行った.
【結果】
MTDLP群の初回値と3・6か月間の変化量は(初回推定値,初回から3か月の変化量の推定値,初回から6か月の変化量の推定値,*は統計的に有意),SPPB(4.12*,0.82*,1.18*),MMSE-J(23.82*,0.18,0.77*),BI(75.59*,3.24*,3.82*),FAI(6.24*,3.71*,4.00*),EQ-5D-5L(0.55*,0.07*,0.11*),健康度(61.89*,2.59,5.88*),実行度(3.12*,2.53*,3.82*),満足度(3.12*,2.12*,3.29*)でありすべての評価項目で有意な改善を認めた.初回と3・6か月間の変化量のMTDLP群と対照群との変化量の差の群間比較は(MTDLP群と対照群の初回から3か月の変化量の差の推定値, MTDLP群と対照群の初回から6か月の変化量の差の推定値,*は統計的に有意),BI(2.00,3.33*),FAI(3.27*,3.13*)でありBIは6か月,FAIは3・6か月でMTDLP群の方が有意に多く改善した.
【考察】
今回例数も少ないため,MTDLPの効果まで言及することはできないが,すべての評価項目で有意な改善を認め,疑似的ではあるが対照群と比較してMTDLPを用いた介入の方がBI,FAIは有意な改善を認めており,MTDLPを用いた対象者の希望する生活行為について介入する訪問リハは,対象者の主体性を引き出し,自己効力感を高めることで,要介護状態の地域在住高齢者の心身機能,生活行為,QOLを改善させる可能性があると考える. また,今回MTDLPを用いてみて,対象者の希望する生活行為に作業療法士の視点が向くようになった実感があり,訪問リハでMTDLPを用いることは「その人らしい生活」を支援する上で有用であると考える.