第57回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-4] 一般演題:地域 4

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 第4会場 (会議場B5-7)

[ON-4-2] 回復期病棟退院後の追跡調査から見えた在宅患者の再入院率と影響する因子

西田 裕司, 上田 幸司, 上東 恵美, 二宮 啓太, 平崎 力 (医療法人せいわ会 登美ヶ丘リハビリテーション病院リハビリテーション部)

【はじめに】
 当院では,回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)から自宅退院した患者に対し,退院後1か月・3か月・6か月・12か月に自宅へ直接訪問(以下退院後調査)し,追跡調査を行っている.その中で,退院後在宅生活を継続できる患者と予定外の再入院に至る患者が存在した.回復期リハ病棟の使命として,自宅退院のみならず住み慣れた地域への安全な移行も重要な役割である.本研究は退院後調査の対象者から回復期リハ病棟退院後患者の再入院率とそのリスク因子を明らかにする事を目的とした.
【方法】
 退院後調査は当院入院中に家屋調査により住宅改修や福祉用具導入を実施し,自宅退院時に同意が得られた患者を対象としている.本研究は後方視的観察研究で,対象は2017年1月以降に入院され,退院後調査を終了した99名のうち,本人希望と転居を理由に終了した者と予定入院の為に再入院した者を除いた80名(74.8±11.5歳,男性42名,女性38名)とした.12か月目の退院後調査を実施できた群(以下在宅継続群)と再入院により退院後調査を終了した群(以下再入院群)の2群に分け,退院時のデータをもとに対応の無いt検定,Fisherの直接確立検定とMann-whitneyのU検定を用い,多重比較を要する項目にはBonferroni法を用いて統計学的有意差を確認した.データ抽出は性別,年齢,疾患区分(脳血管疾患・運動器疾患・廃用症候群),改訂長谷川式簡易認知評価スケール(HDS-R),入院中転倒回数(0回・1回・複数回),既往症(腎臓疾患・心疾患・呼吸器疾患)の有無, Functional Independence Measure(以下FIM)運動項目,FIM利得,実績指数,「できるADL」と「しているADL」の差(以下ADL差),Mini Nutritional Assessment short-form(MNA-SF),アルブミン値について診療録から抽出を行った.統計解析にはEZR(version1.61)を使用し,有意確立5%未満を有意差ありと判断した.本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施し,インフォームドコンセントには,入院時に包括同意が得られた患者を対象として,ホームページ上で研究内容の公開と拒否できる機会を設けた.
【結果】
 回復期リハ病棟から自宅退院した患者の12か月間の再入院は17名で再入院率は21.3%であった.再入院の原因は骨折8名(47.1%),内部疾患7名(41.2%),脳血管疾患2名(11.8%)であった.在宅継続群(73.2±11.7歳,男性35名,女性28名)と再入院群(80.6±8.9歳,男性7名,女性10名)の2群間において,抽出したデータを比較すると,再入院群において有意に高齢(P<0.05),有意にADL差が大きく(P<0.05),有意に心疾患の既往保有率が高い(P<0.01)事が確認された.
【考察】
 回復期退院後の再入院に関する報告は少ない.本研究では骨折を原因とする再入院が最も多かった.高齢やADL差の拡大はバランス低下や意欲低下との関連も報告が見られ,活動量低下による転倒が再入院に影響している可能性が考えられた.既往症の有無による再入院リスクはいくつかの先行研究があり,本研究でも心疾患既往の有無は,再入院に関わる大きな要因であった.心疾患の既往を持つ患者に対しては,ADL能力だけでなく,退院後生活に向けた適切な運動指導や栄養指導,内服指導を含めた健康管理などの多角的な介入が必要と考えた.今後の課題として,回復期退院後患者の再入院は多くの因子が関わると考えられ,患者指導を含む退院前の介入や退院後の活動・生活環境なども視野に入れた調査の継続が必要と思われる.