第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

地域

[ON-5] 一般演題:地域 5

2023年11月11日(土) 11:20 〜 12:20 第4会場 (会議場B5-7)

[ON-5-2] 就労継続支援サービス利用者の社会参加

清水 由佳1, 中村 儀成2, 奈良 進弘3 (1.特定非営利活動法人ゆとり, 2.NPO法人列島会, 3.令和健康科学大学)

【はじめに】我が国の就労継続支援サービス実績では,一般就労移行人数や就労時間数が求められている.
 しかし, 就労支援によって障害者に及ぼす影響につながる情報は少なくその蓄積が必要である.今回,就労継続支援サービス利用者の機能・活動・参加に関する情報を整理し,就労支援の実践状況との関連を分析し報告する.
【方法】本研究は,就労継続支援A型(以下A型)と就労継続支援B型(以下B型)のサービスを実施している3施設と研究機関で行う多機関共同研究として実施した.サービス利用者個々に対して,研究計画説明を行い情報提供について承諾した方を対象に研究を実施し,個人が特定できないように処理したサービス利用者の情報を研究機関で集約して分析を行った.研究計画は,研究機関の倫理審査の承認を得ている.この研究に必要な資源は,共同研究を実施する施設・機関がすべて提供しており,利益相反は存在しない.
就労支援状況を5群に分類した.A型は平均就労時間20時間/週以上の利用者群(以下A-1群)とそれ以下の就労時間の利用者群(以下A-2群)の2つに分けた.またB型を,定期的に就労を継続し,簡単な指示で就労が可能である利用者群(B-1群)と就労状態が不規則になり,活動実施に援助が必要である利用者群(B-2群)の2つに分けた.就労支援を経て,正規就労となっている元利用者(S群)にも研究参加を求めた.利用者の個人特性として,年齢,性別,居住状況,生活介護状況についての情報を収集した.機能面として移動,四肢(欠損),視覚,聴覚,高次機能,言語,精神行動,記憶の機能状況が活動遂行に影響しているがどうかの情報を収集した.活動面としては,日常生活,近隣外出や買い物,公共交通機関利用,電話利用についての活動遂行が自立しているかどうかについての情報を収集した.社会参加の指標として,Community Integration Questionnaire-Revised (以下CIQ-R)の増田による日本語版の結果を,社会的スキルの指標としてKikuchi‘s Scale of Social Skills(以下KiSS-18)を用いた.【結果】参加者は,合計258名(女性109名,男性147名,無回答2名,平均年齢39.7±15.4才)だった.内訳は,A-1群53名,A-2群111名,B-1群40名,B-2群25名であった.
5群に分けた参加者の特性(機能や活動)とCIQ-Rの「生産」を除いた合計得点(以下CIQ-R:M), KiSS-18得点を共分散分析で検討した.
就労支援状況とCIQ-R:M間に,S群,A-1群,A-2群,B-1群,B-2群の順での得点低下が認められた(P<.001)が,KiSS-18については,このような低下は認められなかった.機能状況の活動遂行への影響の有無や活動遂行の自立の有無とCIQ-R:MやKiSS-18の関係性も認められなかった.
【考察】社会参加の指標であるCIQ-R:Mと就労継続支援の状況に有意な関係があることが認められた.このことは,就労継続支援が,狭義の就労だけではなく広く社会参加に意義があることを示唆する知見と考えられた.
社会的スキルや機能,活動と就労継続支援に関して,社会参加同様の傾向は認められなかった.低い社会的スキルでも高度な就労が実現できる,その逆に就労で多くの課題があっても高い社会的スキルを持つという多様性や個別性が示された結果と考えることができた.また正規就労に比べ,就労継続支援においては,同じ仲間や支援者が身近にいる事により社会スキルにおいて自己認識に優位性が認められない結果となった可能性が考えられる.
単に就労時間やその対価に特化する支援でなく,社会参加の視点を持ち,社会スキルの自己認識に配慮し多様性や個別性を尊重した就労継続支援の実践が必要であると考えられる.