第57回日本作業療法学会

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一般演題

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[ON-5] 一般演題:地域 5

2023年11月11日(土) 11:20 〜 12:20 第4会場 (会議場B5-7)

[ON-5-4] 意識調査からみるMTDLPを用いた愛知県刈谷市の訪問型サービスCの現状と課題

宗像 沙千子1, 後藤 進一郎1, 早川 淳子2, 小口 和代1 (1.刈谷豊田総合病院リハビリテーション科, 2.刈谷豊田東病院リハビリテーション科)

【序論】
2017年度より愛知県刈谷市では,介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービスCを「生活機能向上訪問事業(以下,訪問事業)」として開始した.刈谷市内にある6カ所の地域包括支援センター(以下,包括)と連携し,高齢者の生活行為向上と介護予防を目指す.訪問事業は,それぞれの包括で登録されている作業療法士が3~6か月間に3回,高齢者宅を訪問し,生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)を活用して介入する.2017年4月~2022年10月の訪問事業件数は33件で,そのうち29件が刈谷中部包括(当院付帯施設)からの依頼だった.依頼は6か所ある包括のうち1か所に偏っていた.訪問事業に派遣された作業療法士はMTDLPの研修を修了した当院所属の14名だった.
【目的】
刈谷中部包括職員への意識調査から訪問事業を振り返り,刈谷市全体での訪問事業の活用を検討する.
【方法】
意識調査は刈谷中部包括職員8名(主任介護支援専門員4名/社会福祉士3名/保健師1名)に実施した.内容は,訪問事業の総合的評価,利点・改善点,依頼内容とした.依頼内容は「作業療法ガイドライン」で示される「作業療法が扱う生活機能」より抜粋・改編した生活機能20項目(基本的能力,応用的能力,社会的適応能力,環境資源,作業に関する個人特性の5分類,各4項目)からの選択式とした.意識調査は書面を用いて説明し同意を得た.
【結果】
訪問事業を活用した刈谷中部包括職員は8名中5名だった.活用しなかった3名のうち1名は,ケースをほとんど担当しない認知症地域支援専門員だった.意識調査では,訪問事業の満足度は,大変満足1名/満足4名/活用なし3名,療法士の対応は,大変良かった3名/良かった2名/活用なし3名,今後の活用は,ぜひ活用したい4名/活用したい3名/わからない1名だった.利点は,外出や趣味など社会参加につながった,心身機能が改善した,個別対応がよかった,専門的知識を得られたで,改善点は療法士間の質の均等化をお願いしたいだった.依頼内容は,生活機能のうち心身機能(基本的能力),起居・移乗・移動(応用的能力),運動習慣(作業に関する個人特性)を全員が選択した.次いでセルフケア(応用的能力),外出(社会的適応能力),住環境整備(環境資源),生活習慣(作業に関する個人特性)だった.一方で教育・就労(社会的適応能力),食習慣(作業に関する個人特性)での依頼は0名だった.
【考察】
意識調査の結果から,刈谷中部包括職員の訪問事業の満足度は高く,心身機能改善や社会参加が図れ,今後も活用したいと考えていることがわかった.依頼内容や利点から,作業療法士には心身機能やセルフケアだけでなく,運動習慣や外出,生活習慣といった活動や参加の項目が期待されていた.訪問事業でのMTDLPの活用は,対象者を包括的に評価し,活動や参加につながる目標の立案,介入に有用だと考えた.改善点では,療法士間の質の均等化を求める回答があった.14名の作業療法士は,MTDLP研修を修了しているが経験年数は様々で,力量に差があると捉えた.質の向上を目的とした作業療法士内での事例検討,刈谷市の社会資源情報の共有や更新の場が必要であると感じた.
訪問事業は刈谷中部包括からの依頼に偏っており,他の包括からは少ない現状である.今回の意識調査から得られた利点や依頼内容を検討し,全ての地域で訪問事業が必要な高齢者にサービスが提供できる仕組みを検討していきたい.