[ON-9-1] リハビリテーション会議終了後も活動範囲が拡大した一症例
【目的】先行研究より,リハビリテーション(以下,リハ)会議を行うことでLife Space Assessment(以下,LSA)が向上したとの報告はあるが,リハ会議終了後の活動範囲の経過について報告したものは皆無である.今回,リハ会議の中でLSAを用いることで具体的な活動範囲の目標を定め,構成員間の連携によりリハ会議終了から1年経過後も活動範囲がさらに拡大した症例を経験したため報告する.
【倫理的配慮】本発表に関して,症例に書類を用いて説明し同意を得た.
【症例紹介】X年3月に右膝内側側副靱帯損傷,頚椎症性脊髄症を発症し,翌月に椎弓形成術を実施.X+1年6月より当事業所の通所リハを開始.開始時のBIは95点で階段昇降以外のADLは自立レベルであったが,自宅内の移動には杖を使用していた.
【方法】リハ会議は当施設で6ヵ月間実施し,月1回の頻度で計6回実施した.会議は本人,医師,介護支援専門員(以下,CM),福祉用具担当者,作業療法士で行い,福祉用具担当者は感染症対策等の理由で参加困難であったため,書面にて情報共有を行った.移動能力の評価はTimed up & go test(以下,TUG),活動範囲の評価はLSAを用いた.評価時期は開始時,3カ月後,6カ月後,1年6カ月後に行った.
【経過】開始時はTUG:25.3秒,LSA:49.5点で自宅内の移動には杖を使用しており,屋外は歩行器を使用していた.そのため,この時期は自宅内を杖なしで移動できることを目標に訓練を実施した.
3カ月後の会議ではTUG:13.0秒,LSA:55.5点と改善を認め,自宅内は杖なしでの移動が可能となった.この時期は杖での外出に本人が不安を感じていた為,歩行器でスーパーや駅へ行く事を目標に訓練を実施した.経過に合わせて杖歩行訓練を理学療法担当へ依頼し,外出用の杖について福祉用具担当者との検討も進めた.
6カ月後の会議ではTUG:12.1秒,LSA:63.0点と改善を認めた.身体機能の向上に伴い,杖で外出することへの不安もなくなり,杖歩行で駅まで行くことが可能となった.LSA評価の中で,「久々に友人と会いたい」「旅行に行きたい」との希望が挙げられたため,最終目標を「公共交通機関を利用して友人と旅行に行く」こととした.
1年6カ月後はTUG:10.6秒,LSA:73.5点となった.本人より「どこの駅にもエレベーターがあるからどこでも行けるよ」との発言があり,公共交通機関を利用して友人と旅行に行くことも可能となった.
【考察】本症例の活動範囲がリハ会議終了から1年経過後も拡大した要因として,LSAを用いて自ら外出したいと思う具体的希望を引き出し,具体的な活動範囲の最終目標を設定した上で,時期及び身体機能に応じた段階的な目標を設定したことが関与していると考える.
LSAを用いたことで本症例の活動範囲・手段を可視化し,開始時には補助具の有無に着目した目標,3カ月後には活動範囲と補助具の種類に着目した目標,6カ月後には活動範囲のさらなる拡大に着目した目標と,各時期の身体機能改善過程に合わせた活動範囲目標を段階的に設定し,リハ会議の構成員間とも情報共有をすることができた.今回,本症例の最終目標を「公共交通機関を利用して友人と旅行に行く」ことに設定したことで,術後2年半以上経過したリハ会議終了後も外出に対する目標と意欲が維持され,活動範囲の拡大に関与したのではないかと考える.
【倫理的配慮】本発表に関して,症例に書類を用いて説明し同意を得た.
【症例紹介】X年3月に右膝内側側副靱帯損傷,頚椎症性脊髄症を発症し,翌月に椎弓形成術を実施.X+1年6月より当事業所の通所リハを開始.開始時のBIは95点で階段昇降以外のADLは自立レベルであったが,自宅内の移動には杖を使用していた.
【方法】リハ会議は当施設で6ヵ月間実施し,月1回の頻度で計6回実施した.会議は本人,医師,介護支援専門員(以下,CM),福祉用具担当者,作業療法士で行い,福祉用具担当者は感染症対策等の理由で参加困難であったため,書面にて情報共有を行った.移動能力の評価はTimed up & go test(以下,TUG),活動範囲の評価はLSAを用いた.評価時期は開始時,3カ月後,6カ月後,1年6カ月後に行った.
【経過】開始時はTUG:25.3秒,LSA:49.5点で自宅内の移動には杖を使用しており,屋外は歩行器を使用していた.そのため,この時期は自宅内を杖なしで移動できることを目標に訓練を実施した.
3カ月後の会議ではTUG:13.0秒,LSA:55.5点と改善を認め,自宅内は杖なしでの移動が可能となった.この時期は杖での外出に本人が不安を感じていた為,歩行器でスーパーや駅へ行く事を目標に訓練を実施した.経過に合わせて杖歩行訓練を理学療法担当へ依頼し,外出用の杖について福祉用具担当者との検討も進めた.
6カ月後の会議ではTUG:12.1秒,LSA:63.0点と改善を認めた.身体機能の向上に伴い,杖で外出することへの不安もなくなり,杖歩行で駅まで行くことが可能となった.LSA評価の中で,「久々に友人と会いたい」「旅行に行きたい」との希望が挙げられたため,最終目標を「公共交通機関を利用して友人と旅行に行く」こととした.
1年6カ月後はTUG:10.6秒,LSA:73.5点となった.本人より「どこの駅にもエレベーターがあるからどこでも行けるよ」との発言があり,公共交通機関を利用して友人と旅行に行くことも可能となった.
【考察】本症例の活動範囲がリハ会議終了から1年経過後も拡大した要因として,LSAを用いて自ら外出したいと思う具体的希望を引き出し,具体的な活動範囲の最終目標を設定した上で,時期及び身体機能に応じた段階的な目標を設定したことが関与していると考える.
LSAを用いたことで本症例の活動範囲・手段を可視化し,開始時には補助具の有無に着目した目標,3カ月後には活動範囲と補助具の種類に着目した目標,6カ月後には活動範囲のさらなる拡大に着目した目標と,各時期の身体機能改善過程に合わせた活動範囲目標を段階的に設定し,リハ会議の構成員間とも情報共有をすることができた.今回,本症例の最終目標を「公共交通機関を利用して友人と旅行に行く」ことに設定したことで,術後2年半以上経過したリハ会議終了後も外出に対する目標と意欲が維持され,活動範囲の拡大に関与したのではないかと考える.