第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

基礎研究

[OR-1] 一般演題:教育 1

2023年11月10日(金) 15:40 〜 16:50 第7会場 (会議場B3-4)

[OR-1-4] 初年次における学業成績(解剖学・生理学)と学業自己効力感の関連について

北山 淳1, 佐野 祐貴子1, 三好 圭2 (1.医療創生大学健康医療科学部 作業療法学科, 2.医療創生大学健康医療科学部 理学療法学科)

はじめに
近年,少子化の影響や大学数の増加などにより,大学全入の時代に徐々に入りつつある.その影響もあり,高等教育に必要な学力や学習蓄積などが十分に準備されていないまま進学したため,在学中に休学や留年を経験し,また退学を余儀なくされる学生が増えている.2年次以降のスムーズな医療系専門職教育へ移行させるために,1年次での学業成績と学業自己効力感との関連に注目することは意義のあることと考える.
しかし,これまでの学生を対象とした先行研究では,具体的な科目と学業成績との間の関連に注目した研究蓄積が少ないのが現状である.そこで本研究の目的は,1年次の最重要科目である解剖学と生理学の学業成績と学業自己効力感の関連を明らかにし,今後の初年次教育としての教養教育の質的向上や学生指導に役立つ基礎資料を得ることとした.
方法
学生の学業自己効力感に関にする自記式質問紙は,講義を利用し実施した.調査項目は,先行研究を参考に学業自己効力感尺度を使用し,10 項目を設定し,「大学生活を送っていく中で, あなたは次のような項目に対し,どれくらいできると思いますか」と質問し,「5: とても強くそう思う」,「4: 強くそう思う」,「3: どちらともいえない」,「2: そう思 わない」,「1: 全くそう思わない」の 5 件法で回答を求めた.
分析方法は,学業自己効力感の総合得点を従属変数とする二項ロジスティック回帰分析を行った.調整項目として性別と年齢を設定し有意水準を5%未満とした.統計解析ソフトはSPSS version28(IBM社製)を使用した.
なお,本研究は医療創生大学研究医倫理委員会の審査を経て,医療創生大学学長より承認を得ている.(承認番号 21-21)
結果
学業自己効力感の総合得点と学業成績の関係についてロジスティック回帰分析を行った結果(オッズ比:1.129・95%信頼区間:1.007-1.265)であり有意な変数として選択された.さらに学業自己効力感の下位項目と学業成績の関係について,質問2:医療に関わる勉強の内容が理解できる(オッズ比:1.020・95%信頼区間:1.001-1.041)と質問10:学校生活をうまくやっていくことができる(オッズ比:1.033・95%信頼区間: 1.008-1.058)の2項目について影響が認められた.
結論
学業自己効力感の総合得点を従属変数とする二項ロジスティック回帰分析では学業成績が学業自己効力感に及ぼす影響については有意であった.したがって試験の結果が良ければその後の自己効力感は高いという仮説に対しては支持された.
学生自身がテストに対して学習目標を受け入れたり,また学習目標を設定したときには,それを達成するための効力感が増大し,学習が進むことによってさらに強化することを示している.また,即時的なフィードバックが,自己効力感に影響を与え,学習における効力をより高いものにすることを示している .
この先行研究をもとに考えられる今後の教育における取り組みとして,以下のような内容が考えられる.①答案の結果からどのような問題に対して,どのように間違っていたのか,②どのような回答が考えられるのか,③学生自身にそのことを自らの力で行わせることで,正しい自己評価を行わせるような教育が必要である.