第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-10] ポスター:脳血管疾患等 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PA-10-18] 回復期脳卒中患者の上肢活動の特性とそれに関わる要因

南川 勇二1,4, 西 祐樹2,3, 生野 公貴1, 森岡 周3,4 (1.西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部, 2.長崎大学生命医科学域(保健学域), 3.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター, 4.畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室)

【はじめに】脳卒中患者のADLや生活の質に関わる要因の一つとして麻痺側上肢の使用頻度が挙げられる.一般的に重度運動麻痺であれば非麻痺側優位な活動,軽度であれば左右対称的な活動を示す傾向にある.しかし,麻痺の重症度が同等でも麻痺側上肢活動量に違いを認める症例が報告されている.つまり,脳卒中患者の上肢活動量には運動麻痺の重症度に加えて潜在的に他要因の影響を受ける可能性が考えられる.そこで本研究は,脳卒中患者を対象に運動麻痺の重症度と上肢活動量の左右対称性から異なるサブタイプ特性を明らかにし,その特性に関わる身体機能面の特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】対象は回復期病棟入院中の脳卒中片麻痺患者94名(発症経過:73.7±37.7日)とした.3軸加速度計(AX6, Axivity社)を両手関節に装着し,入浴を除く24時間の活動量を計測した.上肢活動量の変数として両側活動強度比を算出した.上肢機能評価には,Fugl-Meyer Assessment上肢(FMA),Action Research Arm Test(ARAT),Motor Activity Log(MAL)を用いた.感覚機能評価はStroke Impairment Assessment Set,上肢の運動時痛はNumerical Rating Scale,麻痺側上肢の不参加や管理不足(上肢の不注意)の有無と利き手麻痺の有無を評価した.ADL評価にはFunctional Independence Measureを用いた.両側活動強度比,FMAによる混合ガウスモデルを用いたクラスター分析を実施した.また,抽出された各クラスター間の比較にはKruskal Wallis testを用いた.事後検定にはMann–Whitney U testを用い多重比較し,Holm法で補正した.また,各クラスターを目的変数とした決定木分析を行い,ジニ係数を用いたClassification and Regression Tree法にて,ツリーの深度は5,分析後の最小事例数を5とした.投入変数は活動量評価を除き,クラスター間比較で有意差を認めたものとした.統計学的有意水準は5%とした.本研究は当該機関倫理審査委員会の承認の上,対象者の説明と同意の上で実施した.
【結果】クラスター分析の結果,6つのクラスター(C)に分類された. C1は運動麻痺重度・左右非対称,C2は運動麻痺中等度・左右非対称,C3は運動麻痺中等度・高い左右非対称,C4は運動麻痺軽度・左右非対称,C5は運動麻痺軽度・左右対称傾向,C6は運動麻痺軽度・左右対称に特徴づけられた.また,両側活動強度比の多重比較検定の結果ではC1とC3,C2とC4で有意差を認めなかった.決定木分析の結果,ARATが35点以下,かつ19.5点以上であれば100%でC3に分類され,利き手麻痺を有していない患者の割合が多かった.ARATが35点以上かつ上肢の不注意を認める場合88.9%でC4に分類され,かつMALのAOUが2.53以上でQOMが4.54以上,更に利き手麻痺を有している場合66.7%でC6に分類された.
【考察】運動麻痺の重症度と上肢活動強度比を用いたクラスター分析から6つのサブタイプの特性が明らかになった.特に,同程度の運動麻痺でも上肢活動量評価における非対称性が高い群(C3,4)を特徴づけることができた.C3は非利き手麻痺が関連し,非対称な上肢活動量を示したと考えられた.C4は軽度片麻痺だが上肢の不注意を認め,上肢活動量が非対称であった.一方,C6では軽度片麻痺であるものの利き手麻痺の場合では対称的な上肢活動を示した.以上のことから,活動量の非対称性が高い群においては,上肢の機能的能力が低下しているために非対称となる場合と,上肢の機能的能力よりも失認や感覚障害等に起因するであろう上肢の不注意が要因となって非対称になっている場合があり,それぞれ異なるリハビリテーション戦略が必要となる可能性が考えられた.