第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-12] ポスター:脳血管疾患等 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PA-12-9] 目標設定における作業療法士の面接の進め方とテクニックに関する質的研究

田代 徹1, 谷本 愛衣1, 山田 絵里香2, 齋藤 佑樹3, 友利 幸之介4 (1.福岡リハビリテーション病院, 2.ちどりばし在宅診療所, 3.仙台青葉学院短期大学, 4.東京工科大学)

背景と目的:作業療法における目標設定は,作業に焦点を当てながらクライエント(CL)と協業的に行うことが求められるが,先行研究を概観するにそのような目標設定は十分に行えていないことが指摘されている.しかし実際の目標設定の面接場面で,作業療法士がCLとどのようなやり取りを行い,成功/失敗に至っているのか詳細に分析した研究は報告されていない.本研究では,作業療法士とCLの目標設定面接時の相互交流を分析し,面接の進め方とテクニックについて検討した.
方法:対象は脳卒中のCLで,回復期病棟に入院中または外来リハを通院し,目標設定を行う予定である者とした.作業療法士とCLの目標設定面接の会話内容を録音し,MAXQDAを用いてコーディングした.分析は事例コードマトリックスを用いた.すなわち縦軸にCL(OT),横軸にコードを配置した表から得られるカテゴリーや概念について検討した.なお本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
結果:作業療法士は4名で,経験年数は6〜15年であった.CLは13名(入院10名,外来3名)で,40〜70歳代であった.会話の主体を作業療法士とCLに分け,まず作業療法士の発言を中心に分析した.得られたコードは324で,これを中分類と大分類に整理・統合した.大分類では【面接プロセス】と【面接テクニック】に統合された.目標設定の【面接プロセス】は,〈面接前の準備〉〈作業の特定〉〈作業療法の計画〉の3つの工程で構成されており,〈面接前の準備〉で作業療法士は「目的を伝える」「今後の見通しを聞く」「達成期間を説明する」「作業療法の説明」「評価方法の説明」を行っていた.〈作業の特定〉では,「作業の情報収集」「重要度を聞く」「OT視点を伝える」「作業の問題を絞る」などが行われていた.〈作業療法の計画〉では,作業療法士は「OT計画の説明」「作業を数値化する」「目標の具体化」「優先順位をつける」などが行われていた.一方【面接テクニック】では,作業療法士はCLとの会話の展開に合わせて様々な工夫を行っていた.〈認識を一致させる〉は,会話を「まとめて共有」したり,「予後を説明」するなど,CLがほしい情報を適切に共有していた.〈パートナーシップを図る〉では,「話しやすい環境」を作り,かつ「共感的な姿勢」で安心感を与えていた.〈内省を促す〉では,「現状を確認」したり,「退院後を想定」したりするなど,CLの困りごとや希望に該当しそうな話題を提案していた.〈会話の基点を作る〉では,面接ツールを用いたりして,「作業のカテゴリー」や「作業の話題の提供」をすることで,会話の流れを作っていた.失語や認知機能障害があるCLに対しては,【面接テクニック】を多用する傾向にあった.
結論:今回,作業療法における目標設定の【面接プロセス】と【面接テクニック】について整理した.CLは作業療法や目標設定の必要性を予め理解しておらず,作業療法士はCLの反応や理解度に合わせて,【面接プロセス】を行き来したり,様々な【面接テクニック】を用いたりしながら,CLの作業についての内省を促していた.今後さらに分析を加え,目標設定の成否に影響するポイントなどを整理する予定である.