第57回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-2] ポスター:脳血管疾患等 2

Fri. Nov 10, 2023 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PA-2-11] 傾向スコアマッチングを用いた回復期脳卒中患者へのReoGo-Jの自主訓練の有効性について

安田 弘希1,2, 竹林 崇2, 田口 潤智3 (1.宝塚リハビリテーション病院療法部, 2.大阪公立大学院リハビリテーション学研究科, 3.宝塚リハビリテーション病院診療部)

【緒言】脳卒中後の上肢麻痺に対しLanghornらのガイドラインにて,ロボット訓練はグレードA・Bとなっており推奨されている.Kwakkelらによるとロボット療法は作業療法を集中的に行ったものと効果は同等と述べており,通常訓練と並行してロボット訓練を行う事が推奨される.本邦では肩・肘関節を対象としたReoGo-Jが多用されている.今回の研究では通常訓練+ReoGo-Jの自主訓練を行った群と石垣らが構築した通常訓練のみを実施した脳卒中後上肢麻痺における回復期の傾向スコアデータプールを用い,傾向スコアマッチングによる通常訓練+ReoGo-Jの自主訓練群と通常訓練のみ群の比較を行いReoGo-Jの自主訓練の効果を明らかにする事とした.本研究は大阪府立大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【方法】対象は高橋らの先行研究を基に先行研究を発症から4〜8週の脳卒中患者とした.測定内容はFugl-meyer Assessment(以下FMA)の上肢項目とした.傾向スコアデータプールとの比較を行うため介入期間は1ヶ月とした.介入方法に関して介入群の作業療法は上肢への訓練を40分実施し,それ以上に関してはADL・IADL訓練を実施し,ReoGo-Jは訓練時間外にて40分実施した. ReoGo-Jの内容は,対象者の回復に合わせ適宜,難易度の変更をおこなった.対照群として用いる傾向スコアデータプールの対象者は作業療法を1日40〜80分提供し,内容は上肢への訓練やADL訓練,IADL訓練を実施していた.傾向スコアマッチングでは先行研究にて設定された年齢,発症からの期間,介入直前のFMAの3つの変数を上肢機能の改善における交絡因子とし,4週目までのデータの傾向スコアを算出した.マッチングの際に許容される傾向スコアの差の範囲であるCaliper値は0.2とした.本研究の対象が発症から4〜8週の方が対象のため,発症からの期間が4週目以前の者はあらかじめ先行研究のデータプールより除外し,傾向スコアマッチングを用いた解析を行なった.全てのデータについてshpiro-wilk検定にて正規性を認めるものにはパラメトリック検定・認めないものに関してはノンパラメトリック検定を用い解析を行った.
【考察】回復期病棟に入院された対象者13名が集積された.マッチング後における群間比較では年齢が介入群では73.2±10.9,対照群が76.6±8.2,p=0.38,発症からの期間が介入群では38(31-45),対象群では38(35-42),p=0.59,介入前のFMA上肢項目が介入群では42(20-52),対象群では45(13-60),p=0.68となり,ベースラインでの2群に優位な差は認めなくなった.介入後のFMA上肢項目の変化量が介入群では13(8-14),対照群では2(0-3),p<0.01,FMA肩肘前腕項目の変化量が介入群では4(1-8),対照群では0(0-3),p=0.01,FMA上肢項目のMinimal Clinically Important Differenceを超えた人数では介入群が7名,対照群が1名,p=0.03となった.
【結果】結果から通常訓練に ReoGo-Jを自主訓練として追加する事で効果が高いことが窺える.本研究での作業療法は40分間,上肢に対する訓練を行い,40分以上の介入は石垣らの傾向スコアデータプールの対象となった方と同様な基本動作・ADL訓練・IADL訓練といった一般的な回復期における作業療法を実施しており,訓練内容に関してはReoGo-Jの自主訓練以外には大きな差はないと思われる.この事から通常介入にReoGo-Jの自主訓練を追加して実施することは,上肢の随意性改善において有効な治療法だと考察する.また別の有効性として回復期においては実績指数の導入により早期退院が求められ,上肢に対する十分な訓練の提供が難しい背景があるが,ReoGo-Jを自主訓練として用いることで,その問題を解決できる可能性があると考察する.