第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-2] ポスター:脳血管疾患等 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-2-13] 回復期脳卒中片麻痺患者におけるベッド・車椅子間の移乗動作自立の縦断的パターンの検討:コホート研究

北村 新1,3, 大高 洋平2,3, 上原 信太郎1, 坂田 祥子3, 近藤 国嗣3 (1.藤田医科大学保健衛生学部リハビリテーション学科, 2.藤田医科大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座, 3.東京湾岸リハビリテーション病院)

【序論】脳卒中患者におけるベッド・車椅子間の移乗動作(以下,移乗動作)自立は,活動性の向上や日常生活活動(以下,ADL)の再建のために重要である.移乗動作は,車椅子駆動によるベッドへのアプローチ,ブレーキの操作,フットサポートから下肢を下ろす,車椅子から立ち上がるなど,複数の諸動作から構成される.これまでに,諸動作は一定の独立性を有しており(Kitamura et al., 2021),自立の難易度は異なることが示されている(Kitamura et al., 2022).しかし,脳卒中患者が諸動作を自立していくうえでのパターンの存在やその特性は明らかではない.諸動作の自立のパターンは,練習の対象となる諸動作の特定や優先順位付けなど,練習計画の立案に有益な情報となる.
【目的】本研究は,脳卒中患者の移乗を構成する諸動作の自立度の変化パターンを明らかにすることを目的とした.
【方法】2016年4月から2017年3月までに回復期リハビリテーション病棟(以下,当院)に入院した初発脳卒中片麻痺患者のうち,車椅子を利用しており,研究に同意が得られた者を対象とした.評価はBed-Wheelchair transfer Tasks Assessment Form(BTAF)を用いて作業療法士が患者の実動作を観察評価した.BTAFは一連の移乗動作を25の諸動作に細分化し,諸動作を「A:自立」,「B:監視」,「C:介助」の3段階の自立度,または「N:動作の必要がない」で評価するツールである(Kitamura, 2021).評価は入院時から2週間隔で,移乗動作が自立するまで,または当院を退院するまで行われた.分析では,入院時と評価終了時の評価結果をカテゴリカル変数としてTwo-step クラスター分析を行い,患者を分類した.その後,分類された患者群の特性の違いを理解するために,各クラスターに含まれる患者の入院時における年齢,発症後期間,身体機能,認知機能,ADL自立度等についてクラスタ間で比較した.本研究は研究倫理委員会からの承認を得た後に,書面にて対象者または代諾者の同意を得たうえで実施した.
【結果】連続症例137名の脳卒中者が研究に参加した.Two-stepクラスター分析の結果,患者は3つのクラスターに分類された.クラスター1(n=50)は,入院時(25項目の諸動作における自立者の割合:52.0-100%,諸動作の自立者割合の平均:77.0%)と評価終了時(自立者の割合:64.0-100%,平均:88.5%)の双方において全ての諸動作で自立者の割合が高かった.クラスター2(n=36)は,入院時に全ての諸動作で自立者の割合が低く(自立患者の割合:0-27.8%,平均:7.9%),評価終了時に自立者の割合が高かった(自立患者の割合:44.4-97.2%,平均:80.4%).しかし,「ナースコールボタンを押す」,「ベッドの手すりを操作する」,「靴を履く」などの移乗動作の準備に関する諸動作は,評価終了時も比較的自立者の割合が低かった.第3のクラスター(n=51)は,入院時(自立患者の割合:0-5.8%,平均:0.6%)から終了時(自立患者の割合:0-29.4%,平均:9.5%)まで一貫して多くの諸動作で自立者の割合が低かった.クラスタ−1から3にかけて各クラスターに含まれる患者の年齢が高くなり,入院時の発症後期間が長くなり,入院時の運動機能,認知機能,ADL自立度が低くなる傾向がみられた.
【結論】移乗動作の自立度とその変化過程は,3つのパターンに分類できた.パターンごとに諸動作の自立の過程や最終的な自立者の割合が異なるため,全ての患者に対して一様な練習方法を適応するのではなく,各パターンの特性に合わせた目標設定と練習戦略の立案が必要である.