第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-2] ポスター:脳血管疾患等 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-2-9] 当院におけるDot末梢課題とドライブシュミレータとの相関関係についての検討

高山 直也1, 小川 拓実1, 恩村 直人1, 山口 達之2 (1.京都中部総合医療センターリハビリテーション科, 2.京都中部総合医療センター神経内科)

【はじめに】
当院では,脳血管疾患患者の自動車運転再開支援として脳卒中ドライバーのスクリーニング評価(SDSA-J)やドライブシュミレータ(DS)を用いて運転支援評価を行っている.SDSA-JはDot抹消課題,方向スクエアマトリックス(スクエア),コンパススクエアマトリックス(コンパス),道路標識の4つの下位項目からなる.その内,Dot抹消課題とDSに関して関連性があるとする報告は少ない.その中で今回は,健常者においてのDot末梢課題とDSの相関関係について検討した.なお,本研究に関しては院内の倫理規定に則り,対象者に説明の上,同意を得た.
【目的】
 本研究では健常者におけるDot末梢課題の誤り数とDSを用いた自動車運転時の事故発生との相関関係について検討した.
【方法】
 対象は2019年12月~2022年12月の期間で,免許保有歴1年以上の健常者13名(平均年齢29.8)を対象とした.評価項目は,Dot末梢課題とDSの総合体験学習(市街地運転)とした.統計にはスピアマンの順位相関係数を用いた.
【結果】
 Dot末梢課題の誤り数とDSを用いた自動車運転の事故発生数の相関係数は(rs)=0.2336との結果となった.健常者においてDot末梢課題とDSの市街地運転の交通事故数との相関が低いことが示唆された.
【考察】
 先行研究では,SDSA-JのDot末梢課題と比べて,他のスクエア,コンパス,道路標識の検査は実車評価結果との相関が高く,Dot末梢課題と実車評価との相関は低いとの報告がある(山田恭平ら2018).先行研究同様,本研究においても,健常者はDot末梢課題とDSでの事故発生との相関が低いことが示唆された.
 Dot抹消課題において,カットオフ値は明確ではないが,検査マニュアル上,早さよりも正確性を重視されている.そのため被験者が慎重に取り組むことでミスが少なく,課題を完遂できる(勝浦駿平ら 2019)との報告がある.本研究において,被検者が慎重にDot末梢課題を実施したことでミスが少なくなり,DSは操作に不慣れであるうえに,1回目のデータを使用していたことで,事故発生数が通常より増えたことが考えられる.そのため,Dot末梢課題とDSでは相関が低かったと考える.今後,DSを複数回実施した上での検討も必要と考える.その他に,Dot抹消課題は時間制限内に正確に課題を遂行する,かつ紙面上にある複数のパターンの4つの点の集まりを選択的に消去する課題であることから,Dot抹消課題に必要な能力として遂行機能,情報処理能力,注意機能,記憶機能などが必要であると考える.また,運転に必要な能力として,注意機能,情報処理能力,視空間認知機能,記憶機能などが必要であるとの報告がある(加藤徳明 2021).これらのことから,Dot末梢課題とDSに共通して必要な能力は共通するものが多く関連が深いように思えるが,本研究では健常者を対象としたことで,比較的差がないこれらの能力よりも,個人の性格や操作の慣れなどの要素の方が影響し,不規則な結果となり相関が低くなったと考える.ただ,本研究では症例数が少なかったため,今後も症例数を増やしていきながら検討を続けていきたい.