第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-3] ポスター:脳血管疾患等 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-3-12] 作業療法と触感測定機器を併用した介入が脳卒中後重度感覚障害に与える影響

田上 駿弥 (医療法人財団聖十字会 西日本病院リハビリテーション部)

【はじめに】
脳卒中を呈した80%が麻痺側上肢の感覚障害を経験することが報告されている.この感覚障害は麻痺側上肢を危険な状態にさらし,日常生活では機能的な使用頻度の低下や対象者の自立レベルに影響を及ぼすことが明らかになっている.臨床において運動麻痺は軽度であるが重度の感覚障害により上肢機能が著しく低下している症例に対する介入に難渋する事を経験する.今回,重度感覚障害を呈する症例に対して作業療法に併せて触感測定機器(ゆびレコーダー,株式会社テック技販)を使用し,介入したため考察を含めて報告する.
【目的】
重度上肢感覚障害を呈する症例に対して通常介入と通常介入に併せてゆびレコーダーを使用した介入による効果を比較検証する.本研究はヘルシンキ宣言に従い倫理と個人情報に配慮し,口頭での説明と書面にて同意を得て実施した.
【方法】
介入効果の検討をシングルケースデザイン(ABABデザイン)を用いて行なった.A期を通常介入期,B期を通常介入にゆびレコーダーを併せて介入を行い約1ヶ月毎に介入を変更して実施した.さらに初回通常介入期をA1期2回目の通常介入期をA2期としてB期も同様にB1,B2期と定義した.A期は通常の作業療法を提供した.B期は介入中にゆびレコーダーを併せて介入した.評価はFugl Meyer Assessment(FMA),9ホールペグテスト(9HPT),Semmes Weinstein Monofilament Test(SWT),Box and Block Test(BBT),握力,Action Research Arm Test(ARAT)を各介入終了時に評価を行い比較した.
【結果】
介入時,FMAは30点であり中等度上肢麻痺を呈していた.9HPT及びSWTは実施困難で重度感覚障害であった.A1,A2期とB1,B2期で評価結果を比較するとB1,B2期では有意に感覚が向上している結果を示した.また物品の操作においてもARATではB2期で57/57点となっており物品の操作が可能となった.通常介入に併せてゆびレコーダーを行うことで感覚障害が軽減する結果となった.
【考察】
今回,重度感覚障害を呈した症例に対して通常介入に併せてゆびレコーダーによる感覚入力を目的とした比較検証を行なった.結果として感覚入力を実行した時期に有意な改善を認めた.ゆびレコーダーは検知した皮膚振動の周波数特性を変更し,センサーが取得した情報をイコライザーを通して振動子で提示し,直接対象に触れ触覚情報を取得することが可能である.そのため,手触りに加え,筆記感,スイッチの押し込み感にも有効的であることが報告されている.ゆびレコーダーによる振動刺激が症例にとっては感覚を得られる代償手段として成り立っており物品に触れることや把持することに対する上肢運動を意識できていた.また,ゆびレコーダーを使用するにあたり物品を使用した反復運動を行い,その都度フィードバックを行う課題指向型訓練を行った.課題指向型訓練と訓練毎にゆびレコーダーを使用しフィードバックが出来る介入がマッチしていたと考えられる.その結果,反復運動に対して感覚入力することで従来のリハと比較して感覚障害が軽減でき,上肢機能が改善したことが示唆された.