第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-3] ポスター:脳血管疾患等 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-3-16] 回復期リハビリテーション病棟の脳卒中後FIM重度者におけるFIM改善度に関連する因子の検討

本間 健太, 河西 涼子 (医療法人新成医会 総合リハビリテーションセンター・みどり病院リハビリテーション科)

【はじめに】
2016年にアウトカム評価として実績指数が導入され,Functional Independence Measure (FIM) 運動項目(mFIM)の利得と在院日数が重要となっている.その後,2018年には実績指数は回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)入院料の区分基準の根幹として求められ,退院時mFIMを入院初期に予測することは重要である.当院回復期病棟においても,入院初期に療法士による退院時mFIMの予測を行っており,予測精度を検証した研究(山重,2022)では,入院時mFIMの低い重度者において予測精度が低いことが挙げられていた.そのため,入院時mFIM重度者の改善度に関連する因子を把握することは,退院時mFIMの予測精度を高めるために重要である.
【目的】
回復期病棟の入院割合の多い脳卒中患者を対象とし,入院時mFIMが低い重度者の退院時mFIMの改善度に関連する因子を明らかにすることを目的とした.
【方法】
本研究は,当院倫理審査委員会の承認を得て実施した.
2021年4月から2022年3月に当院回復期リハ病棟に入退院した脳卒中患者(脳出血,脳梗塞,くも膜下出血)の内,重度者(入院時mFIM 38点以下)79名を対象とした.入院中に再発などの急変や死亡した患者は除外した.重度者をさらに重度群(退院時mFIM 38点以下),中等度群(退院時mFIM 39~64点),軽度群(退院時mFIM 65~91点)の3群に分けた.調査項目として,年齢,病巣半球,失語症の有無,糖尿病の有無,発症から入院までの期間(発症後期間),入院時FIM認知項目(cFIM),入院時SIAS,入院時MNA-SF,入院中の1日毎の平均リハ提供単位数(リハ提供単位数)を診療記録から後方視的に収集した.連続変数は平均値を算出し,正規性と等分散性を確認した.3群において,Fisherの正確検定,一元配置分散分析,Kruskal-Wallis検定にて群間比較し,Bonferroni法にて補正した.有意水準は5%未満とした.
【結果】
各群の割合は,重度群47%(n=37) ,中等度群20%(n=16) ,軽度群33%(n=26)であった.入院時cFIMにおいて有意差を認め(p<0.001) ,重度群と軽度群(p<0.001) ,重度群と中等度群(p<0.001) で有意差を認めた. SIASにおいて有意差を認め(p<0.001) ,重度群と軽度群(p<0.001) ,重度群と中等度群(p<0.001) で有意差を認めた.リハ提供単位数において有意差を認め(p<0.01) ,重度群と軽度群(p<0.01) で有意差を認めた.各平均値(標準偏差)について,入院時cFIMは軽度群18.15 (±5.11) ,中等度群15.19 (±5.80) ,重度群10.38 (±5.84) .入院時SIASは軽度群42.08 (±17.83) ,中等度群40.62 (±14.24) ,重度群25.14 (±14.89) .リハ提供単位数は軽度群7,89 (±0.45) ,中等度群7.77 (±0.56) ,重度群7.69 (±0.70) であった.
【考察】
本研究の結果,入院時mFIMが低い重度者のうち,入院時の認知機能が低く,機能障害が重度であり,リハ提供単位数が少ない患者は,退院時も重度であることが示唆された.認知機能が低いことや機能障害が重度であることは,リハビリテーションの目的についての十分な理解が難しい場合や全身状態が不安定な可能性があり,療法士がリハ提供単位を充実提供できていない可能性が考えられる.今後は,相関関係や重回帰分析を行い,更なる関連性を明らかにしていく必要がある.