第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-4] ポスター:脳血管疾患等 4

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-4-12] 更衣自立と認知機能(Cognitive-related Behavioral Assessment)の関与

寺嶋 陽平, 田中 実希 (鵜飼リハビリテーション病院リハビリテーション部)

【はじめに】 回復期リハビリテーション病棟では在宅復帰を目指し,より効果的な自立度の向上が求められている.多くの病院で療法士の早出体制が導入されており,療法士の介入による効果も散見される.当院においては2000年の開設時より療法士は早朝リハビリ(以下,早リハ)としてケアを行ってきたが,2020年より個別療法へと変更した.作業療法では更衣の自立を目的に介入を行っている.限られた時間の中で効果的に行えるよう基準を設けているが,今回,基準の精度を高めるために認知機能の関与について検討したので報告する.
本研究は,医療法人珪山会鵜飼リハビリテーション病院の倫理審査委員会の承認を得ている.
【目的】 早リハの対象者について,効率的に更衣自立を図るため,更衣と認知機能の関係を明らかにする.
【対象と方法】 当院での早リハの対象は,FIM更衣項目が3~5点の患者の中から担当作業療法士が選定している.今回,令和3年4月から令和5年1月までの期間に早リハで更衣に介入した入院患者78名(平均年齢76.3±11.4歳,脳血管疾患58名,整形疾患20名)について,認知行動アセスメント(Cognitive-related Behavioral Assessment:以下,CBA)を用い,自立の可否を検討した.CBAとは行動から認知機能を評価する指標であり,0点を最重度とした30点満点の評価表である. その他の評価項目はFIM(上衣,下衣),をそれぞれpre,postとし採点した.基本情報として年齢,疾患をカルテより抽出し,開始から終了までの期間を実施期間とした.比較方法は,post FIM6,7点を自立群,5点以下を非自立群とし,2群間のpostCBAをMann−WhitneyのU検定を用いて比較した.さらに,更衣自立との関係性を見るために,自立群と非自立群を従属変数,単変量解析において年齢とCBAを独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った.さらに,カットオフ値を算出した.カットオフ値はROC曲線の図左上隅からの最小距離となる点と定めた.統計ソフトはエクセル統計,IBM SPSS Statistics for windows version 21,0(IBM Corporation,Armonk,NY USA)を用い,有意水準は5%とした.
【結果】 自立群(34名,年齢平均72.1歳)のpostCBAの中央値は24点,非自立群(44名,79.4歳)のpostCBAは20点であり,2群間で有意差を認めた(p<0,05). 自立群,非自立群でのロジスティック回帰分析の結果,更衣自立の有無とCBAの間に有意な関連を認めた(オッズ比1.84,95%信頼区間:1.19-2.83,P値:0.006).さらにROC曲線を作成した結果,更衣自立の可否を判別するカットオフ値は23点(AUC 0.84,95%信頼区間:0.75-0.93,感度0.68,特異度0.85)であった.
【考察】 今回の研究により,更衣の自立には認知機能が関わっており,CBAは23点がカットオフとして算出された.伊藤らはCBA重症度分類において,23~28点を軽度とし,ADL自立判定の目安と報告している.今回の研究でも,preFIMが5点で自立しなかった患者のCBAは21点以下であることがほとんどであった.一方で,preFIM3点でも自立した患者のpostCBAは24点以上であった.ただし,実施期間が長くなる傾向にあった.認知機能の視点から考えた場合,preFIMが低い場合でもCBAが高い患者は早リハへの選定をし,preFIMが高くてもCBAが低く自立の見込みが少ない場合には,ある程度の日数で区切ることも必要だと思われる.現在,当院の基準では認知機能の基準は設けてないが,基準や目安を設けることで臨床経験の少ない新人スタッフでも,より効率的な対象者の選定が可能であると考える.