第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-5] ポスター:脳血管疾患等 5

2023年11月10日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-5-14] 脳卒中後上肢麻痺の心理尺度CAHMに関するスコーピングレビュー

永吉 隆生1, 天野 暁2,3, 松岡 耕史1, 高橋 香代子2,3 (1.多摩丘陵病院リハビリテーション技術部, 2.北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科, 3.北里大学大学院医療系研究科)

【はじめに】
昨今,医療・介護領域においてエビデンスに基づいたアプローチの必要性が認識されているが,作業療法領域においてはエビデンスの構築が遅れているという声も上がっている.医療現場で脳卒中後上肢機能の作業療法を行う中で,対象者の身体機能のみでなく,精神機能の変化を数値で示すことの意義が問われている.近年,脳卒中後上肢麻痺に焦点を当てたself-efficacyの評価尺度としてConfidence in Arm and Hand Movement scale(CAHM)の開発が進められている.CAHMは家庭,地域社会において,麻痺側上肢の使用に関わる20項目の課題遂行への自信を0から100 点で評価するものである.本研究では,国内外におけるCAHMに纏わる研究のナラティブと活用状況について明らかにする目的で,スコーピングレビューを実施した.
【方法】
検索エンジンはPubMed,医中誌Web,J-STAGE,CiNii,UMIN,Google Scalarを使用し,2022年10月27日までの期間で検索を行った.検索語は,「CAHM」「Confidence in Arm and Hand Movement」といった対象評価尺度を表す用語とし,タイトル・キーワード・抄録のいずれかに検索語が含まれるものを抽出し,評価尺度以外のCAHMに関する文献,重複文献を除外とした.文献選択やデータの抽出は筆頭演者1名が独立して実施し,対象文献を選定した.
【結果】
対象文献は14件であった.文献の出版期間は2013年から2022年で,2020年が4件と最多であった.第一著者の所属機関は,CAHM開発者であるLewthwaite Rebeccaが所属する南カリフォルニア大学を中心に米国,日本,オーストラリア,カナダ,イスラエルにおける11箇所が特定された.CAHMの活用状況として,発症後期間は数週から数ヶ月と幅広く,対象者は主に中等度から軽度上肢麻痺を呈した男女であった.また,課題指向型訓練やミラーニューロンに関する訓練において,リーチ動作や物品移動を含む上肢運動機能とself-efficacy の相関を調べる目的で用いられており,CAHMとAction Research Arm Testのスコアは有意に相関していることが示されていた.
【まとめ】
CAHMは脳卒中後上肢麻痺者の心理的側面を測定できる評価尺度として,これだけの認知度がありながら,日本では脳卒中関連のself-efficacyに関わる尺度がなく観察評価における自由記載レベルに留まっている.麻痺側上肢の使用に関わる行動変容を遂げるために重要な心理学的因子としてself-efficacyとperceived barriersが挙げられており(Morrisら,2006),評価尺度を用いて心理状態を測定し,行動変容とself-efficacy,perceived barriersとの関係性が明確になれば,対象者の心理特性から行動変容や課題選定も考慮できると考える.今後,CAHMの日本語版作成と信頼性・妥当性の検討を行うことは,臨床的に重要であると考える.