第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-6] ポスター:脳血管疾患等 6

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-6-3] 脳卒中後上肢麻痺の事例報告における本邦でのロボット療法に関するスコーピングレビュー

佐藤 光1, 高木 崚平2, 宇都宮 裕人1 (1.IMSグループ 医療法人社団明芳会 イムス横浜東戸塚総合リハビリテーション病院, 2.山形市立病院済生館)

はじめに
 脳卒中ガイドライン2021では,中等度以上の上肢麻痺患者に対するロボット療法に関して推奨度Bとされている. 近年,脳卒中患者に対してロボット療法を用いた構造的な有用性は示されているが,活用方法,量,期間など詳細なプロトコルは定かではない.今回,本邦で実施されている脳卒中後の上肢麻痺を対象に,ロボット療法を使用した事例報告について整理し,ロボット療法のプロトコルに関しての現状と課題を明らかにする事を目的としてスコーピングレビュー(以下,ScR)を実施した.
方法
 研究疑問は①脳卒中を呈した患者にロボット療法をどのように活用しているか②どのような身体機能を有した患者に実施しているか(ⅰ実施領域,ⅱ介入前の重症度,ⅲ使用開始時期,ⅳ使用時間・場面(訓練内・自主訓練),ⅴ使用日数,ⅵ併用訓練,ⅶ介入効果,ⅷ使用機器)とした.本研究はScRの為の報告ガイドライン日本語版:PRISMA-SCRに沿って実施した.検索ワードは,脳卒中AND上肢AND麻痺ANDロボットとし,医中誌,J-STAGEの2つの検索エンジンからタイトル,キーワードに検索ワードが含まれるもので抽出した.医中誌では本文あり,原著論文,会議録除く,検索年数1990~2022年の項目を絞り込み条件とし,J-STAGEではジャーナル,査読あり,日本語,検索年数1990~2022年の項目を検索条件とした(抽出日2022.8.18) .その後,ハンドサーチで日本作業療法学会2008~2022年の抄録から検索ワードを含むものを抽出した.次に1次スクリーニングとして題目と要旨から適正基準を満たしているものを抽出し,重複している論文は除外した.2次スクリーニングとして,入手可能な論文の本文を査読し,適格基準と除外基準に照らして分析対象となる研究論文を抽出した.論文選択やデータの抽出は,2名が独立して実施し,意見が分かれた場合は3名で議論した.
結果
 ロボット療法に関する事例報告は104件,抄録は44件該当し,最終的な分析対象は24件,34名であった.実施領域:急性期2名,急性期-回復期3名,回復期20名,維持期3名,外来6名.介入前の重症度BRS:上肢Ⅰ-Ⅱ7名,Ⅲ-Ⅳ6名,Ⅴ-Ⅵ2名.手指:Ⅰ-Ⅱ7名,Ⅲ-Ⅳ5名,Ⅴ-Ⅵ3名FMA:超重度19名,重度3名,中等度6名,軽度2名,ほぼ正常3名.MAL-AOU:記載あり27名,記載なし7名.使用開始時期:1-30日5名,31-60日13名,61-90日2名,91-120日2名,121-150日2名,以降5名.使用時間数:0-20分12名,21-40分11名,41分-60分6名,場面:訓練内のみ21名,自主訓練のみ6名,訓練内~自主訓練移行4名.使用日数 0-30日15名,31-60日8名,61-90日3名,91-120日2名,121-150日0名,以上3名.併用訓練:機能指向型訓練6名,課題指向型訓練7名,CI療法(修正含む)10名,電気刺激療法13名,装具療法5名,MT2名,行動療法4名.介入効果: BRS:向上:上肢9名,手指6名.変化なし:上肢1名,手指4名.FMAのMCIDを超える変化23名,下回る変化9名.MAL-AOUのMCIDを超える変化21名,下回る変化6名.使用機器:ReoGo-J21名,Hand of Hope4名,ReoGo3名, Burt5名,HAL2名, SMART2名, CoCoroeAR21名であった.
考察
 結果より,ロボット療法の活用に関しては,回復期にて上肢麻痺の重度から中等度の患者を中心に行われていた.使用機器はReoGo-Jが中心であり,課題指向型訓練に繋げる為に併用訓練を実施している事が多かった.また,機器を使用する前後の評価項目にばらつきがあり,訓練のみの使用に留まる事が多く,ロボット療法の使用領域や期間は限定的であった.今後,ロボット療法を適切に使用する為の評価,自主訓練への移行支援の報告,回復期以外での報告数の増加が課題であると考える.