第57回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-7] ポスター:脳血管疾患等 7

Sat. Nov 11, 2023 10:10 AM - 11:10 AM ポスター会場 (展示棟)

[PA-7-1] 生活期脳卒中患者に対する自主訓練型上肢機能訓練の効果

沢田 宏美1, 増田 雄亮2,3, 新藤 恵一郎4,5, 近藤 国嗣4 (1.東京湾岸リハビリテーション病院リハビリテーション部作業療法科, 2.谷津居宅サービスセンター在宅リハビリテーション科, 3.湘南医療大学保健医療学部リハビリテーション学科, 4.東京湾岸リハビリテーション病院リハビリテーション科, 5.光ヶ丘病院)

【序論】近年,脳卒中後上肢麻痺に対するニューロリハビリテーションの有効性が多数報告されている.しかし,生活期脳卒中患者を対象とした通所リハビリテーションにおける課題指向型訓練の報告は少ない.
【目的】われわれは,通所リハビリテーションにおいて実施可能な自主訓練型の上肢機能訓練プログラム(本プログラム)を考案した.本研究の目的は,本プログラムの実施前後における介入効果を検討することである.
【方法】本プログラムは,対象者3~6名に対して作業療法士1名を配置して行い, 1日3時間を週1回の頻度で課題指向型訓練とTransfer Packageを6ヶ月間実施した.課題指向型訓練では,目標達成に向けた段階的な反復訓練(Shaping Task)と日常使用する道具を用いた模擬的作業課題(Task Practice)を実施した.訓練課題は15分程度で完遂できる内容とし,1日に10種類程度の自主訓練メニューを作業療法士が作成し,対象者の上肢機能の改善に応じて難易度調整を行った.また,利用時間中にTransfer Packageの振り返りを30分程度行った.本プログラムの適応基準は,①Stroke Impairment Assessment Set運動項目のknee-mouth test 2以上かつfinger function test 1b以上の者,②Mini Mental State Examinationが20点以上である者,③脳卒中発症後180日以上経過している者などとした.上記を満たした者のうち,2019年7月から2022年6月末までの3年間において,本プログラムを終了した11名(男性6名,女性5名,平均年齢65.1±6.1歳)を本研究の対象とした.効果判定には,Fugl-Meyer Assessment(FMA)の上肢運動項目, Box and Block Test(BBT),Action Research Arm Test(ARAT),Motor Activity Log(MAL)のAmount of Use(AOU)とQuality of Movement(QOM)を用いた.統計解析は,対応のあるt検定を実施し,効果量Δを算出した.加えて,各評価指標における変化量と対象者の基本属性(年齢,発症後年数,通所開始後年数,通所回数)との関連をSpearmanの順位相関分析により検討した.統計ソフトはIBM SPSS Statistics 21.0J for Windowsを使用し,危険率は5%とした.なお,本研究は併設病院であるA病院倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:293).
【結果】介入前後において,FMAは42.3±10.5点から49.5±7.8点,BBTは17.6±16.1個から24.2±15.1個,ARATは30.2±19.9点から41.4±15.5点,MALのAOUは1.8±1.4点から2.8±1.5点,QOMは1.5±1.1点から2.4±1.2点へ向上し,有意な改善を認め(p<.05),すべての参加者で,少なくとも1つの評価にて臨床的意義のある改善を認めた.効果量(Δ)は,MALのQOMで.83(大),FMA,ARAT,MALのAOUで.56~.68(中),BBTで.41(小)であった.各評価指標の変化量と対象者の基本属性との間に有意な相関は認めなかった.
【考察】FMA,BBT,ARAT,MALのAOUにおいて臨床的意義のある改善を認めた.本プログラムは,麻痺手の運動機能と運動パフォーマンス,麻痺手の生活内における参加状況に対し一定の効果を認めたものと考えられる.Swayneら(2008)による中枢神経再組織化のステージ理論によれば,生活期リハビリテーションでは「シナプス伝達の効率化」が主要な運動麻痺回復のメカニズムとして考えられている.生活期脳卒中患者に対し通所リハビリテーションにおいて本プログラムを実施することは,回復メカニズムを後押しする効果が期待できるものと考えられる.