[PA-7-10] Dynamic splint作製により即時効果による上肢機能改善と歩容の変化を認めた痙性片麻痺患者の経験
<はじめに>外来リハビリテーションで痙性片麻痺患者にDynamic splint作製により即時効果で物品把持，リリースが可能となる以外に，装着時の歩容の変化が認められた症例を経験したため以下に報告する．
<症例紹介>50代，男性．診断名：脳梗塞．現病歴：右半身麻痺，構音障害を呈し，当院急性期病棟，回復期リハビリテーション病棟を経て165日で自宅退院．自宅退院後，上肢機能の改善と職業復帰の希望があり，外来リハビリ通院となった．本発表に関して，目的・用途について説明を行い患者およびご家族の同意を得た．
外来初回評価：運動麻痺：Br.stage上肢Ⅲ手指Ⅲ下肢Ⅴ．感覚障害：表在軽度鈍麻，深部中等度鈍麻．高次脳機能：運動性失語．筋緊張：MAS 手指屈筋群2，長母指屈筋2，手関節屈筋2．ROM：四肢に著明な関節可動域制限はないが，麻痺側手指屈筋に短縮傾向．麻痺側上肢評価：肩関節は自動屈曲45°自動外転45°程度可能，自動内旋，外旋運動困難．肘関節は自動屈曲，自動伸展運動の選択的収縮可能．手指は自動屈曲運動可能であるが伸展運動困難．手指と手関節は屈筋痙性に支配され，物品把持を自己で行うことは困難．体幹・麻痺側下肢評価FBS49/56点 歩行：独歩自立，屋外歩行見守りであり，10m歩行テスト：10.7秒 FIM：運動83点，認知35点，合計118点．歩行動作：麻痺側立脚期において股関節と体幹の伸展が不十分，軽度左側屈偏移，遊脚期においては代償動作で分回し様．麻痺側上肢は肩関節内転，内旋位，肘関節屈曲，手関節手指屈曲位が観察された
<結果>
作製装具：背側型長対立装具（手関節軽度背曲位，母指掌側外転位，Mp関節軽度屈曲Ip関節軽度屈曲，示指・中指・環指・小指はPIP関節・DIP関節伸展位に固定しMp関節を伸展方向にゴムでけん引）を小指指伸筋腱断裂後の早期運動療法で利用する装具を応用して作製．上肢への即時効果は上肢装具装着時に3㎝程度の物品把持が可能となり，両手動作の練習が可能となった．麻痺側手指の手指の力を抜くイメージが行いやすくなった．歩行への即時効果は，上肢装具装着することで麻痺側上肢の痙性が抑制され，歩行後の麻痺側上肢の肘屈曲角度が軽減された．麻痺側立脚期の股関節及び，体幹の股伸展域が拡大し安定性が向上，麻痺側遊脚期の分回し様が軽減された．上肢装具への受け入れについては，訓練場面では装具を使用ことで，様々な上肢訓練課題が可能となり満足が得られた．また歩行動作時は「バランスが取りやすい感じがします」とポジティブな発言が聞かれた．同居者へ装着方法指導を行ったが，自宅での装具利用には至らなかった．使わない理由として，自分で付けることができない事・外観などが挙げられた．
<考察>手指痙性が手指運動，歩行時のバランス反応へ影響を及ぼしていた本症例では観察場面でも歩容の改善が確認された．麻痺側手指の屈曲痙性出現を上肢装具で強制的に抑える事により，麻痺側肘屈曲・肩関節内転内旋が抑制され，麻痺側立脚期において体幹・股関節伸展動作が行いやすくなり，麻痺側遊脚期での分回し歩行という痙性片麻痺の代償パターンが軽減された．上肢装具を用いて痙性が起こらない環境にすることで，痙性片麻痺患者の基本動作/歩行動作の効率的な動作能力獲得の一助になると考えられる．
訓練場面以外で使用できなかった事が残念であるが，入院時に使用する，自己装着を容易にできる指のカフの固定方法，外観など今後検討していく必要がある．
また本症例以外の効果なども検討していきたい．
<症例紹介>50代，男性．診断名：脳梗塞．現病歴：右半身麻痺，構音障害を呈し，当院急性期病棟，回復期リハビリテーション病棟を経て165日で自宅退院．自宅退院後，上肢機能の改善と職業復帰の希望があり，外来リハビリ通院となった．本発表に関して，目的・用途について説明を行い患者およびご家族の同意を得た．
外来初回評価：運動麻痺：Br.stage上肢Ⅲ手指Ⅲ下肢Ⅴ．感覚障害：表在軽度鈍麻，深部中等度鈍麻．高次脳機能：運動性失語．筋緊張：MAS 手指屈筋群2，長母指屈筋2，手関節屈筋2．ROM：四肢に著明な関節可動域制限はないが，麻痺側手指屈筋に短縮傾向．麻痺側上肢評価：肩関節は自動屈曲45°自動外転45°程度可能，自動内旋，外旋運動困難．肘関節は自動屈曲，自動伸展運動の選択的収縮可能．手指は自動屈曲運動可能であるが伸展運動困難．手指と手関節は屈筋痙性に支配され，物品把持を自己で行うことは困難．体幹・麻痺側下肢評価FBS49/56点 歩行：独歩自立，屋外歩行見守りであり，10m歩行テスト：10.7秒 FIM：運動83点，認知35点，合計118点．歩行動作：麻痺側立脚期において股関節と体幹の伸展が不十分，軽度左側屈偏移，遊脚期においては代償動作で分回し様．麻痺側上肢は肩関節内転，内旋位，肘関節屈曲，手関節手指屈曲位が観察された
<結果>
作製装具：背側型長対立装具（手関節軽度背曲位，母指掌側外転位，Mp関節軽度屈曲Ip関節軽度屈曲，示指・中指・環指・小指はPIP関節・DIP関節伸展位に固定しMp関節を伸展方向にゴムでけん引）を小指指伸筋腱断裂後の早期運動療法で利用する装具を応用して作製．上肢への即時効果は上肢装具装着時に3㎝程度の物品把持が可能となり，両手動作の練習が可能となった．麻痺側手指の手指の力を抜くイメージが行いやすくなった．歩行への即時効果は，上肢装具装着することで麻痺側上肢の痙性が抑制され，歩行後の麻痺側上肢の肘屈曲角度が軽減された．麻痺側立脚期の股関節及び，体幹の股伸展域が拡大し安定性が向上，麻痺側遊脚期の分回し様が軽減された．上肢装具への受け入れについては，訓練場面では装具を使用ことで，様々な上肢訓練課題が可能となり満足が得られた．また歩行動作時は「バランスが取りやすい感じがします」とポジティブな発言が聞かれた．同居者へ装着方法指導を行ったが，自宅での装具利用には至らなかった．使わない理由として，自分で付けることができない事・外観などが挙げられた．
<考察>手指痙性が手指運動，歩行時のバランス反応へ影響を及ぼしていた本症例では観察場面でも歩容の改善が確認された．麻痺側手指の屈曲痙性出現を上肢装具で強制的に抑える事により，麻痺側肘屈曲・肩関節内転内旋が抑制され，麻痺側立脚期において体幹・股関節伸展動作が行いやすくなり，麻痺側遊脚期での分回し歩行という痙性片麻痺の代償パターンが軽減された．上肢装具を用いて痙性が起こらない環境にすることで，痙性片麻痺患者の基本動作/歩行動作の効率的な動作能力獲得の一助になると考えられる．
訓練場面以外で使用できなかった事が残念であるが，入院時に使用する，自己装着を容易にできる指のカフの固定方法，外観など今後検討していく必要がある．
また本症例以外の効果なども検討していきたい．