第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-7] ポスター:脳血管疾患等 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PA-7-16] 入院中脳卒中患者の身体活動時間に影響する因子

佐藤 ちひろ1, 小枝 周平1, 三上 美咲1, 齋藤 峻2, 山田 順子1 (1.弘前大学大学院保健学研究科総合リハビリテーション科学領域, 2.八戸市立市民病院リハビリテーション科)

【はじめに】
脳卒中の後遺症は,患者の活動量を減少させる.活動量の減少は,廃用症状などの二次的な問題を招くことから,作業療法士は早期から積極的な離床を図る必要がある.本研究では,入院患者の離床を進める際に考慮すべき症状を明らかにするために,回復期の脳卒中患者の身体活動量を活動量計で計測し,身体活動強度別にその時間に影響を及ぼす症状を調査した.
【方法】
対象者は,回復期病棟に入院中の脳卒中患者23名(平均年齢67.0±9.4,男性17名,女性6名)である.身体活動量の計測には腰部装着型活動量計(Activity Monitor Active style Pro HJA-750C, OMRON社) を用い,入院生活での平均的な24時間の活動量を測定した.本機は,10秒ごとに各対象の身長,体重に合わせたMetabolic Equivalents(METs)が算出できる.本研究では,得られたMETsを,座位行動レベル以下(1.8METs未満),立位行動レベル(1.8METs以上3.0METs未満),歩行行動レベル以上(3.0METs以上)の3つの身体活動レベルに分け,それぞれの時間を算出した.また,対象者の抑うつ状態をSelf-rating Depression Scale(SDS),運動機能をFugl-Meyer Assessment(FMA),Activities of Daily Living(ADL)能力をFunction Independence Measure運動項目(M-FIM) ,疼痛をVisual analog scale -pain (VAS-pain)を用いて評価した.身体活動時間と各種評価との関係はSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.解析には,Kyplot ver.6.0を用い,危険率5%未満を有意とした.本研究は,弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会および(一財)黎明郷倫理委員会の承認を得て実施し,開示すべきCOIはない.
【結果】
座位行動レベル以下の活動時間は,SDS得点との間に有意な正の相関を認め(rs =0.46),座位・臥床の時間が長い者は抑うつ状態が強かった (p<0.05).立位行動レベルの活動時間は,SDS得点との間に有意な負の相関(rs =-0.42),FMA運動合計得点との間に有意な正の相関(rs =0.39)を認め,立位レベルの活動時間が長い者は抑うつ状態が軽度で運動機能が良好であった(p<0.05).歩行行動レベル以上の活動時間は,FMA得点(rs =0.54),M-FIM得点(rs =0.65)との間に有意な正の相関を認め,歩行レベルの活動時間が長い者は運動機能とADL能力が高かった(p<0.05).
【考察】
座位行動レベル以下の活動時間には,抑うつ状態のみが関連し,臥床時間の短縮や座位での離床時間の拡大には抑うつ状態への配慮が有効であることが示された.また,立位行動レベルの活動時間には,抑うつ状態と運動機能が関係し,立位での活動時間の拡大には抑うつ状態と運動機能の改善が有効であることが示された.歩行行動レベル以上の活動時間には,運動機能とADL能力が関係し,歩行レベル以上の活動時間の拡大には運動機能とADL能力を高めることが有効であることが示された.このように,各身体活動強度別に関連する症状が異なることから,各患者の生活上の活動強度のレベルに応じて関連する各種症状の評価・治療を実施することがスムーズな離床促進につながる可能性があることが示唆された.