第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-9] ポスター:脳血管疾患等 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PA-9-17] 急性期におけるPusher現象とADLの関係性

田城 朱音 (国家公務員 共済組合連合会 平塚共済病院リハビリテーション科)

【はじめに】回復期では,Pusher現象が生じることでADL改善に影響し退院時期が延長する傾向がある.急性期やADL項目ごとの研究は少ない.今回急性期におけるPusher現象の経過と傾向,Pusher現象の有無によるADL自立度の変化の3つをScale for Contraversive Pushing (SCP) ・Functional Independence Measure (FIM)を用いて検討した.
【対象】2022年4月~12月に作業療法依頼があった処方の中から無作為に計50例(年齢平均71.3,半球損傷右24,左26)を選定した. 病前のADLは自立し,脳卒中の既往がない事を選定条件とした.Pusher群の選定条件は,病巣を大脳動脈領域の梗塞,視床・被殻出血に設定し,除外項目を意識障害(JCS1-3以上),全失語症,BRSⅣ以下に設定した.
【方法】今回,Pusher群の①SCPの経過②年齢平均③半球損傷の左右差④病巣の傾向を検討した.⑤Pusher現象の有無によるADL自立度の変化は,P群と非P群を設定しFIMの運動項目を用いて,立位評価日を開始日として,1週目・2週目に分けて統計学的に比例検討した.Pusher現象の有無はLeg orientationで判断を行い,重症度評価は SCPで評価を行った.ADL評価には, FIMの運動項目を抜粋し使用した.評価回数は,1日目・1週目・2週目の計3回で実施を行った.分析的研究を用いた.統計処理には,対応のあるt検定,Mann-WhitneyのU検定,一元配置(Tukey法)を用いた.【結果】①は,SCP合計改善値0.38.1週目(端座位0.29,立位0.15)2週目(1.68 /0.32).②は,平均年齢71.3±12.2.③は,右半球損傷12例,左半球損傷13例.④は,脳出血16例(視床10例,被殻6例)脳梗塞9例(視床2例,被殻1例,MCA領域4例,ICA領域2例).⑤は,合計改善値は,1週目(P群0.92/非P群0.26)2週目(0.56/0.8).各項目は,食事:1週目(1.32/1.46)2週目(0.24/0.68).整容:1週目(0.56/1.32)2週目(5.8/0.8).清拭:1週目(0.16/0.73)2週目(0.32/0.66).更衣上衣:1週目(0.28/1.1)2週目(0.12/0.92).更衣下衣:1週目(0.24/0.44)2週目(0.73/0.68).トイレ動作:1週目(0.4/1.16)2週目(0.28/0.76).排尿管理:1週目(0.04/0.88)2週目(0.6/0.32).排便管理:1週目(0/1.96)2週目(0.68/0.2).ベッド・椅子・車椅子移乗:1週目(0.84/2.2)2週目(1.76/0.44).トイレ移乗:1週目(0.46/1.3)2週目(1.32/0.54).浴槽・シャワ-移乗:1週目(0.16/1.12)2週目(0.24/0.8).歩行・車椅子移動:1週目(0.12/1.76)2週目(0.24/0.8).階段移動:1週目(0/0.08)2週目(0/0.08)であった.Pusher群は非Pusher群と比較し,すべての項目で改善値が低かった.
【考察】急性期におけるPusher現象の経過は,先行文献と同じ結果となった.SCPの改善率として後期が高い要因として, リハビリやリハビリ外での離床が進んでいることが考えられる.Pusher現象の傾向として,年齢平均は先行文献と同様の結果となった.大脳半球損傷の左右差は見られなかった.考察として,急性期では意識障害が蔓延している患者が多く,SCPを正確に評価できる症例が限られてくるため,正確な傾向を検証ことが難しいと考える.病巣は,視床・被殻が多い結果となり,先行文献と同様であった.急性期でのPusher現象とADL自立度の関係性において,Pusher現象が生じている場合,ADLの獲得は約2倍以上の差が生じている.回復期の先行文献では右半球損傷が多い傾向であった.要因として,右半球は空間無視が生じやすく残存しやすい.急性期における今後の介入工夫として早期離床・ADL評価や多職種での情報共有を行う事や,空間無視に対しての早期訓練を行う事が重要であると考えた.