第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-12] ポスター:運動器疾患 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PD-12-2] 骨粗鬆症もしくは骨量減少と診断された橈骨遠位端骨折例の転倒リスクとその特徴

野島 美希1, 工藤 文孝2, 髙山 拓人3 (1.東大和病院リハビリテーション科, 2.東大和病院整形外科, 3.笛吹中央病院整形外科)

【はじめに】
 橈骨遠位端骨折は骨脆弱性骨折の一つとされ,閉経後の女性に多く,発生率は50歳代後半から上昇すると報告されている.先行文献では,立位からの転倒等の低エネルギー外傷が49~77%を占めるとされているが,転倒リスク評価について調査した報告は少ない.
 今回,骨粗鬆症もしくは骨量減少と診断された橈骨遠位端骨折手術例の転倒リスクとその特徴について調査したので報告する.
【対象と方法】
 対象は2019年~2022年に作業療法が処方された橈骨遠位端骨折118例のうち,DXA法にて腰椎,大腿骨骨密度が測定され,YAM値が80%未満であった65歳以上の女性28例である.
 調査項目は受傷時年齢,過去1年の転倒既往,開眼片脚立位,Time Up and Go Test(以下TUG), Fall Risk Index‐21(以下FRI-21),転倒原因とし,各評価結果を65~74歳の前期高齢者(以下YO群12例),75歳以上の後期高齢者(以下OO群16例)に分けて比較した.
 統計学的評価はWelchのt検定を用い,P値<0.05を有意差ありとした.なお,症例には研究の趣旨と個人情報の守秘を書面にて説明し同意を得ている.
【結果】
 平均年齢は, YO群68.8歳,OO群80.8歳.過去1年の転倒既往例は, YO群5例(41.7%),OO群7例(43.8%)であった.片脚立位平均は,右; YO群19.8秒,OO群19.8秒,左; YO群18.8秒,OO群17.2秒で両群間に有意差はなかった.Cutoff値15秒以上の転倒リスク例は, YO群右2例(16.7%),左5例(41.7%),OO群右7例(43.8%),左10例(62.5%)であった.TUGは, YO群9.3秒,OO群10.4秒で両群間に有意差はなかった.Cutoff値11秒以上の転倒リスク例は,YO群2例(16.7%),OO群6例(37.5%)であった.FRI- 21 は,YO群7.3点,OO群7.8点で両群間に有意差はなかった.Cutoff値10点以上の転倒リスク例は, YO群3例(25%),OO群6例(37.5%)であった.転倒原因は, YO群は,屋外歩行中5例(41.7%),段差の踏み外し4例(33.3%), OO群は,駅や庭・屋外歩行中8例(50%),めまい2例(12.5%),バランスを崩す2例(12.5%),階段の踏み外し2例(12.5 %)であった.高エネルギー外傷と思われる自転車乗車時の転倒は,YO群3例(25%),OO群2例(12.5%)であった.年齢群が高くなる事で,加齢に伴うバランス不良やめまいなどの身体機能低下,ADLやIADLで活動中の転倒が増える傾向にあった.
【考察】
 骨粗鬆症を基盤とした橈骨遠位端骨折患者は,社会活動性低下に伴い,自宅内や自室内での転倒が多い事が予想された.しかし自験例では,年齢群が上がる事で各調査項目のCutoff値を超える症例が増加し,身体能力,活動能力低下が見られたものの,屋外での活動時に転倒受傷する例が比較的多かった.Haginoらは,骨折の危険因子として外出頻度が高く,歩行能力が高い事などを挙げており,社会活動性と身体能力,活動能力のアンバランスが転倒リスクに関与している可能性が考えられた.またHaginoは,骨折は骨の脆弱化の進行と転倒リスクの上昇の両者が関与するとも述べ,骨折連鎖予防の観点からも,お気づかせ骨折ともいわれている橈骨遠位端骨折受傷後,早期の介入が必要で,患者の初期評価には,転倒原因の聴取と身体能力,活動能力評価を行う事は必須であり,骨折のリハビリのみならず,転倒リスクが高い患者には,筋力増強やバランス改善などの身体機能向上が図れるプログラムを,積極的に取り入れる事が重要であると考えられた.