第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-9] ポスター:運動器疾患 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PD-9-4] 大腿骨頸部骨折術後患者の社会活動とソーシャルネットワークの関係

青木 竜太朗1, 土井豆 美貴2, 板倉 和南2 (1.島根リハビリテーション学院 作業療法学科, 2.出雲医療生活協働組合 出雲市民病院 リハビリテーション科)

【はじめに】
我が国の地域包括ケアシステムでは,住み慣れた地域で継続して生活できるように整備が進められている.また,日本作業療法士協会は社会が求める「活動」と「参加」に資する作業療法の実践が求めている.作業療法士は医療機関から在宅への復帰支援を行うが,その後の社会活動への参加状況については報告が少ない.そこで本報告では,大腿骨頸部骨折術後患者の社会活動への参加とソーシャルネットワークの関係を明らかにすることした.
【対象と方法】
対象は2014年4月1日から2020年3月31日までの間に地域包括ケア病棟に入院及び自宅退院した65歳以上の大腿骨頸部骨折術後患者106名とした.対象者には本研究の趣旨を書面にて説明し,文書にて同意を得た.研究実施にあたり,島根大学医学部倫理委員会の承認を得ている.対象者に対して年齢,社会活動への参加の有無,ソーシャルネットワークの評価項目が記載されたアンケートを配布した.社会活動の評価には,「介護予防や地域包括ケアの推進に対する国民の意欲調査研究事業」の調査項目にある社会活動を一部改変し利用した.質問項目は,「健康づくり・運動」,「趣味活動」,「地域行事」,「ボランティア活動」,「地域づくり街づくり」,「高齢者支援活動」,「伝統・文化を伝える活動」,「子育て支援」の8項目に対して「している・していない」の2件法で調査した.ソーシャルネットワークの評価には,日本語版Lubben Social Network Scale短縮版(以下LSNS-6)を使用した.家族と非家族ネットワークの6項目に対して,0〜5点の6段階で評価し,合計の最高得点は30点である.社会活動の8項目に対して参加の有無で2群に分類し,2群間の比較には性別はχ2検定,正規分布しない項目はMann−WhitneyのU検定を用いた.統計学的処理にはSPSS(Ver.23)を使用し,有意水準を5%未満とした.
【結果】
解析対象者はアンケートと同意書の返信,不備の見られなかった20名(男性2名,女性18名,平均年齢82.1±6.2歳)とした.「健康づくり・運動」では,非家族の月1回会う人数(p=0.01),非家族の個人的に話す人数(p=0.01),非家族の助けを求める人数(p=0.01),合計得点(p=0.007)において有意差を認めた.「趣味活動」では,非家族の個人的に話す人数(p=0.04),非家族の助けを求める人数(p=0.01)において有意差を認めた.「地域行事」では,有意差を認める項目はなかった.「地域づくり街づくり」では,非家族の助けを求める人数(p=0.03)において有意差を認めた.「子育て支援」では,家族の月1回会う人数(p=0.004),合計得点(p=0.04)において有意差を認めた.
【考察】
今回の調査結果では,非家族支援ネットワークが社会活動への参加をする上で重要な要因であることが示唆された.複数の研究から地域での友人や知人とのつながりが社会活動に影響を及ぼすとされており本研究の結果は先行研究に矛盾しないものであった.我々作業療法士は,在宅復帰のみに囚われるのではなく,地域社会におけるクライエントの役割,他者との関わりを知り,地域社会を巻き込み支援することで社会活動への参加を促進することにつながると思われる.