第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

がん

[PF-6] ポスター:がん 6

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PF-6-2] リンパ浮腫を呈した高齢がん患者に対するリンパ浮腫治療とセルフケアの現状

島崎 寛将 (大阪府済生会富田林病院リハビリテーション科)

<はじめに>
高齢がん患者は心身機能や認知機能の低下を有し,標準的治療の適応や自己管理(以下セルフケア)が難しい場合も多い.そのため,個別性に応じたオーダーメイド治療が必要とされる.高齢がん患者に配慮した指導方法を検討するため,今回,高齢がん患者の治療とセルフケアの現状を調査したので報告する.尚,本研究については当院倫理委員会にて承認を得た.
<方法>
2021年2月から2023年1月までにリンパ浮腫外来を受診した高齢がん患者(65歳以上)17名に対し,外来時の治療内容と自宅でのセルフケアの状況を調査した.調査項目は,性別,年齢,要介護認定の有無,疾患名,リンパ浮腫治療期間,リンパ浮腫治療日数,1回当たりの治療時間,外来治療内容,セルフケアの実施状況,浮腫の管理状況とした.浮腫の管理状況は,上肢8箇所(中指,手部,手首,前腕2箇所,肘,上腕2箇所),下肢8箇所(足部2箇所,足首,下腿2箇所,膝,大腿2箇所)をそれぞれ計測し,リハ開始前と最終計測時を比較し判断した.
<結果>
患者は全例女性で平均年齢は76.1歳(67-92歳).うち要介護認定を受けている患者は6名であった.乳がんが10名/10肢で婦人科がんが7名(子宮体がん2名,卵巣がん3名,子宮頸がん1名,不明1名)/9肢であった.
外来継続中の患者を除く,治療期間の中央値は5ヶ月で,治療日数の中央値は10.5日であった.1回の治療時間は5名が60分枠で,12名が40分枠で行っていた.
治療内容は,運動療法の拒否があった1名を除き,複合的治療及び日常生活指導を行っていた.
自宅でのセルフケア状況は,複合的治療を自己で継続できた患者は5名(6肢)で,その他12名については実施困難または一部のみ実施の項目があった.また,そのうち6名は家族指導・協力が必要であった.
セルフケアとしての複合的治療を自宅で継続できた患者のうち,リンパ浮腫の改善(全計測部位での軽減)を認めたのは3名3肢であった.一方,セルフケアとしての複合的治療の継続が一部自宅で困難であった患者のうち,リンパ浮腫の改善を認めたのは4名(4肢)であった.リンパ浮腫の改善を認めた7名のうち,2名は要介護認定を受けている患者であった.
<考察>
リンパ浮腫治療においては複合的治療と日常生活指導が基本であり,これらの治療を継続し浮腫の管理を行いながら生活再建を目指す必要がある.しかし,高齢がん患者の多くはこれらすべての治療を自宅で継続することは困難な場合が多い.そのため,個々の病態や心身機能,認知機能,生活スタイルなどに合わせて個別性の高い治療(管理方法)を模索し,指導する必要がある.今回の調査でも,実際に自宅でのセルフケアとして複合的治療を自身で継続できた患者は5名に限られた.しかし,全ては自身でできなかった患者においても,一部の患者で浮腫の改善が認められ,セルフケアの内容や介護認定の有無などと浮腫の改善に優位な相関は認められなかった.このことから,リンパ浮腫の改善に必ずしも複合的治療の全ての自己管理は必要でないことが示唆された.また,必要なケアの一部であっても自宅で継続することで浮腫の軽減が得られている患者が認められていることから,自己管理が難しい高齢者においても,自己にて遂行できるセルフケアを見つける支援は重要であると考えられた.
今後はさらにリンパ浮腫の管理に影響を与える因子とより良いセルフケアのあり方について検討を進めていきたい.