第57回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

がん

[PF-7] ポスター:がん 7

Sat. Nov 11, 2023 10:10 AM - 11:10 AM ポスター会場 (展示棟)

[PF-7-3] 緩和ケア病棟におけるリハビリテーションの実施状況に関する質問紙調査

西山 菜々子1, 松田 能宣2, 藤原 紀子3, 中島 信久4, 小山田 隼佑5 (1.大阪公立大学大総合リハビリテーション学研究科, 2.国立病院機構近畿中央呼吸器センター心療内科, 3.東京大学医科学研究所附属病院先端緩和医療科, 4.琉球大学病院 地域・国際医療部, 5.特定非営利活動法人JORTCデータセンター統計部門)

【はじめに】
緩和ケア病棟におけるリハビリテーション(以下,リハビリ)は,国内の緩和ケア病棟が開設された1890年代当初から実施されてきた.ニーズは高く,日本医師会の新版がん緩和ケアガイドブック(2017年)等でも推奨されている.しかし,緩和ケア病棟においても十分なリハビリを提供する施設がある一方で,提供できるリハビリが制限される施設やリハビリの提供自体がない施設もあるという.緩和ケア病棟におけるリハビリの実施状況は2007年の先行報告(井上順一朗ら)があるが,それ以降は確認できるものがない.
【目的】
本調査の目的は,近年の緩和ケア病棟におけるリハビリの実施状況を明らかにすることである.
【方法】
国内の緩和ケア病棟入院料届出受理施設452施設に対し,2022年8月~10月に郵送による質問紙調査を行った.全施設に督促を1回行った.COVID-19の影響を排除するために2019年度の状況を調査対象とした.質問項目は,2007年の先行報告をもとに作成した.
本研究は,人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針と個人情報保護に関する法律に基づいて計画し,発表者所属施設の倫理委員会の承認を受けて実施した(課題番号2021-219).倫理指針に基づいて作成した説明文書を同封し,同意を求めるべき事項について調査用紙にチェック欄を設け,回答者の同意の意向を確認した.
【結果】
191施設から返送があり(回収率42.3%),そのうち126施設から回答を得た.平均病床数は19.9床(SD6.3),平均在院日数は28.5日(SD12.2)であった.リハビリ専門職によるリハビリを実施している施設が112施設(88.9%),単発の評価のみ行う施設が4施設(3.2%),全く実施していない施設が10施設(7.9%)であった.
リハビリを実施している施設では,入院患者のうち平均51.7%(SD31.3,最小0.5-最大100)に対してリハビリを依頼しており,リハビリを依頼する際の患者の全身状態は,Performance Status(PS)0-1が平均8.1%(SD13.0),PS2が平均18.1%(SD15.9),PS3が平均43.8%(SD22.6),PS4が平均29.8%(SD22.4%)であった.リハビリの実施頻度は週4日以上が78施設(69.6%),週2~3日が28施設(25.0%),週1日以下が4施設(3.6%)であった.1日あたりの実施時間は20分未満が34施設(30.4%),21~40分が61施設(54.5%),41~60分が10施設(8.9%),61分以上が5施設(4.5%)であった.それぞれの実施状況が患者・家族のニーズに応えられていると回答したのは,頻度では69施設(61.6%),時間では71施設(63.4%)だった.
【考察】
国内の緩和ケア病棟でリハビリを実施する施設数とその実施状況は,2007年の先行報告(実施する施設81.7%,週4日以上62.5%,20分未満45.8%)に比べて増加しており,緩和ケア病棟入院患者におけるリハビリのニーズの高まりが反映された可能性がある.一方で,リハビリを実施する施設であってもその頻度や時間が患者・家族のニーズに応えられていると認識されている施設は6割程度にとどまり,ニーズに対して十分なリハビリが提供できていない施設もまだ多くある実態が明らかとなった.