第57回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-9] ポスター:がん 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PF-9-4] 乳がん腋窩リンパ節郭清術後患者におけるQ-DASHを用いた肩関節可動域制限因子の検討

斎藤 成美1, 芹澤 健輔1, 鈴木 礼真1, 清水 大輔2 (1.横浜市立みなと赤十字病院リハビリテーション部, 2.横浜市立みなと赤十字病院乳腺外科)

【背景】
当院では乳がんにおける腋窩リンパ節郭清術後(以下Ax)患者に対し,術後1年間のプロトコールを作成し作業療法介入を実施している.術後一年の観察で,肩関節可動域制限を生じる患者が一定数存在するため,可動域制限を生じる患者因子を知ることが,早期介入に重要と考えた.当院プロトコール完遂患者を対象にした以前の研究では,術後半年時点の主観的評価Q-DASHのスコアが,可動域制限を生じた患者において高い傾向があることを報告した.
【目的】
術後一年経過時点で,肩関節可動域制限があった患者とない患者の,術後半年時点のQ-DASHの各項目を比較し,より詳細に肩関節可動域制限を生じる因子について検討をすることを目的とした.
【対象と方法】
 Ax患者のうち2015年11月から2022年9月にプロトコールを完遂した患者138名を対象とした.術後一年時点で肩関節可動域制限を生じた患者34名を肩関節可動域制限あり群,それ以外をなし群とした.術後半年時点での主観的評価Q-DASHスコアのDisability/Symptomの11項目につき,2群における差をMann-WhitneyのU検定を用いて検討した.なお,可動域制限の定義は対側と比較し肩関節屈曲・外転・外旋いずれかの1運動方向でも5度以上もしくは左右で15度以上差が生じたもの,術後介入の場合は左右で15度以上の低下を認めたものとした.
【結果】
2群におけるQ-DASHの各項目のスコアをMann-WhitneyのU検定を用いて比較検討したが,各項目個々では,両群における有意差は認められなかった.
【考察】
以前の研究では可動域制限を生じた患者の半年のQ-DASHのトータルスコアで有意な傾向を認めたが,今回の研究では実際の臨床場面においても術後から半年の期間で家事や仕事での上肢の使用困難さを訴える患者が多く, 11項目の中でも“重労働の家事をすること”や“買い物バックや書類かばんを持ち歩く”などは得点が高くなるのではないかと推察された.また,各項目の傾向知ることで可動域制限となる要因をより具体的に把握することができ,術後早期より必要な機能改善や動作練習などの介入を行うことができるのではないかと考えた.しかし各項目において統計学的有意差は認められなかった.その理由として可動域制限の有無と主観的な評価の乖離がある患者が一定数いることや,また日常生活動作は個別性が高く,主観的な困難さが直接的に機能制限を反映することの限界があること,また,そもそも主観的評価には,多くの評価項目が必要である可能性などが考えられた.
今後は半年時点で生じる疼痛や腋窩ウェブ症候群,皮膚状態などの評価と合わせた検討や化学療法や放射線治療などの後療法の内容と合わせた可動域制限の要因も検討していきたい.