第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

内科疾患

[PG-2] ポスター:内科疾患 2

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PG-2-1] 小児期発症全身性強皮症の臨床像とリハビリテーション経験

麦井 直樹1, 濱口 儒人2, 松下 貴史2 (1.金沢大学附属病院リハビリテーション部, 2.金沢大学医薬保健研究域医学系皮膚分子病態学)

【はじめに】
我々は全身性強皮症(SSc)のリハビリテーション(リハ)について検討してきた.SScの発症時期は一般的に40~50歳代とされているが,少数ながら小児例も一定数存在する.しかし小児期発症のSScについての報告は少なく,リハについての検討は手指の機能障害を調査した報告のみである.今回小児期発症のSScの臨床像とリハの役割について検討し,その方針等を明確とすることを目的とした.
【対象】
対象は,当院OTに処方されたSSc 549例中,18歳未満で処方された16例.平均年齢11.8歳,女性9例,男性7例であった.
【方法】
症例の臨床所見およびリハプログラムについて後方視的に調査した.臨床所見として, 罹病期間,強皮症特異抗体,病型分類,皮膚硬化の程度を示すMRSS,陥凹性瘢痕,皮膚潰瘍,爪郭部毛細血管所見,手指ROM制限,四肢のROM制限,間質性肺疾患,肺高血圧症,腎クリーゼ,上部消化管障害,下部消化管障害の有無を調査した.リハに関しては,手指または四肢のストレッチ,ストレッチの家族指導,呼吸リハ,顔リハとして顔の表情筋自動運動の実施の有無とした.さらに観察期間と臨床所見の経過等,特記すべき事象について調査した.
調査にあたっては大学の倫理委員会の承認(No.960)を得た.
【結果】
臨床所見について, 平均罹病期間2.2年,強皮症特異抗体は,抗トポイソメラーゼ1抗体12例,抗セントロメア抗体と抗U3RNP抗体が各々1例,未同定2例であった.病型分類ではびまん皮膚硬化型が7例,限局皮膚硬化型が5例.平均MRSSは10.8点.陥凹性瘢痕10例,皮膚潰瘍2例,異常爪郭部毛細血管13例(13例中),手指ROM制限7例,四肢のROM制限5例,間質性肺疾患4例,肺高血圧症1例,上部消化管障害6例に各々みられ,腎クリーゼ,下部消化管障害はみられなかった.リハに関しては,手指ストレッチは経過中に皮膚硬化が悪化した1例を含む10例,四肢のストレッチ6例,ストレッチの家族指導5例,顔の表情筋自動運動6例に実施した.平均観察期間は6.6年で10年以上が5例であった.就労まで観察できた症例は6例で,うち3例は障害者枠を活用した.臨床所見の経過では皮膚潰瘍が6例に新規に出現した.間質性肺疾患は4例にみられたが観察期間で悪化はなかった.1例のみ肺高血圧症を呈していたが薬物療法にて軽快し,平均肺動脈圧は正常化した.リハ頻度は遠方の症例も多く,機能評価や生活指導が中心となることが多く,1~2か月の頻度で外来リハを継続した症例は5例のみであった.概ね機能低下なく経過していたが,RAがオーバーラップした症例とSLEのオーバーラップに加え,皮膚硬化の悪化と頻発する皮膚潰瘍がみられた症例は手指で重度のROM制限を呈した.
【考察】
今回の調査では,成人と比較して抗トポイソメラーゼ1抗体が多かったが,限局皮膚硬化型を呈した症例も複数みられた.しかし初回に皮膚硬化の程度も低く,皮膚潰瘍もみられない症例であっても経過で皮膚硬化の悪化や皮膚潰瘍の出現がみられることもあり,経過観察中の症状に応じたアプローチが大切であることが示唆された.長期経過では,RAやSLEのオーバーラップの症例で手指拘縮の進行がみられたが,臨床症状としては関節炎や皮膚潰瘍を呈した症例であり,成人と同様に長期経過で注意すべき症例であった.具体的には寒冷刺激や拘縮予防など,成人以上に長期にわたり疾患とともに生活することが必要であるため,親を含めた形で生活指導を行うことはより重要であることが示された.