第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

内科疾患

[PG-3] ポスター:内科疾患 3

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PG-3-4] 排尿自立支援加算に携わる作業療法士の実状

中村 真悠1, 今西 里佳2, 中島 ともみ3 (1.新潟医療生活協同組合 木戸病院リハビリテーション科, 2.新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 作業療法学科, 3.藤田医科大学保健衛生学部 リハビリテーション学科)

【はじめに】平成28年に排尿管理に関する診療報酬である「排尿自立指導料」が新設され,排尿ケアチームメンバーは医師,看護師,PTまたはOTが必須という条件となっている.令和2年の改定では「排尿自立支援加算」「外来排尿自立指導料」が新設され,急性期・回復期・維持期において算定が可能となり,OTの活躍に期待が寄せられているが,排尿ケアチームで業務を行う療法士からは「チーム内で何をしたらよいのかわからない」という声を聞くと報告されており,その実状は明らかになっていない.【目的】排尿ケアチームにおけるOTの役割や困りごとを把握し,今後の対応策を検討することを目的とした.【研究方法】令和2年12月時点の届出857施設の排尿ケアチームを対象とした.各施設へ質問票を送付し,回収した.質問票には,排尿ケアチームに所属する職種,排尿ケアチーム内で求められる役割,業務上の不明な点や困りごと,下部尿路機能障害に関する認識などの設問を載せた.回答書を返送していただくことで同意を得たものとし回収した.分析は回答者からOTを抽出し,各質問項目の回答毎の割合を求めた.なお,本調査は新潟医療福祉大学倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】回答票の回収率は49.7%で,全回答が揃う398施設の療法士は544名で,そのうちOTは158名(29.0%)であった.OTが排尿ケアチーム内で他職種から求められる役割は,上位から,トイレ動作評価(96.2%),起居・移乗・移動動作評価(88.0%),運動機能評価(79.1%)であった.清潔間欠自己導尿に関して,上肢・手指機能評価は47.5%が,姿勢評価は34.2%が求められていた.下部尿路リハビリテーションについて,骨盤底筋トレーニングの実施は43.0%が求められていた.排尿誘導実施は34.8%が,膀胱訓練実施は12.7%が求められていた.生活指導は12.0%が,在宅復帰に向けての準備は43.7%が求められていた.排尿ケアチームの業務で不明な点は,尿流動態検査(70.9%),下部尿路機能障害に対する薬物療法(59.5%),手術療法(57.6%)であった.業務上で困ることは下部尿路機能評価に関する知識・技術不足(70.9%),下部尿路機能障害に関する知識不足(67.1%),下部尿路リハビリテーションの知識不足(58.9%)であった.排尿ケアチームに加入する前に65.2%は下部尿路機能障害を知っていた一方,下部尿路機能障害を他者に説明できる程の理解率は4.4%であった.【考察】排尿ケアチームのOTは他職種からトイレ動作の評価を高率で求められていた.この診療報酬に関わらず,トイレ動作の評価・訓練はOTの中心的な役割で通常様々な疾患の患者に実施している業務であるため,躊躇なく実施できているものと考えられる.また清潔間欠自己導尿の上肢・手指機能評価は約半数が求められていることから,排尿自立支援に携わるOTの大きな役割の一つであると考えられる.下部尿路リハビリテーションでは骨盤底筋トレーニングと排尿誘導の実施について3割以上が求められている一方,膀胱訓練や生活指導は低率だった.下部尿路機能障害の評価やアプローチの知識・技術の不足を困りごとに挙げているOTが多いことから,下部尿路機能障害の評価と下部尿路リハビリテーションの教育の強化は必要である.OT養成教育モデルコアカリキュラム2019には,下部尿路機能障害の評価と治療が記載された.したがって各養成校での卒前教育の充実は図られるものと思われるが,臨床OTに対する卒後教育の充実を図ることが急務であると考える.