第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-3] ポスター:精神障害 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PH-3-6] ひきこもり支援に携わるOTで構成されたネットワークの意義の検討

児嶋 亮1, 佐々木 有里2, 米澤 知紀3, 松元 雄太4, 西田 百合香5 (1.桜花会クリニックデイケアセンター, 2.いわくら病院, 3.訪問看護ステーションおうばく, 4.まるいクリニック, 5.醍醐病院)

【はじめに】日本のひきこもり者数は15~39歳で約54万人,40~64歳で約61万人(内閣府)とされ社会課題となっている.ひきこもりは精神疾患や発達障害との関連が指摘されているものの,医療専門職の介入は体系化されておらず,OTにとってもマイノリティーな支援領域である.京都府作業療法士会ひきこもり支援OTチーム(以下OTチーム)は,医療におけるひきこもり支援に,予防的観点からの支援を付加させるべく2019年に発足した.発足当時,ひきこもり支援に関するOTの全国的なネットワークはなく,ひきこもり支援に従事する地域のOTは他職種・他業種との協同支援において職業的アイデンティティを模索しながら支援に当っており,医療・福祉領域のOTは地域の実践者と連携する機会が得にくい状況であった.そこで啓発及び連携と学びの機会を目的として2021年に全国OTひきこもり支援勉強会(以下勉強会)を立ち上げた.今回,勉強会の経過報告と参加者への聞き取りを通して,ひきこもり支援に携わるOTにとってのネットワークの意義を検討し報告する.
【方法】2021年1月より隔月で勉強会を開催.参加者は,行政,教育,NPO法人,障害福祉施設,精神科病院,老人保健施設,身体障害分野等に所属する27名(令和5年1月現在)のOTと,OTチームであった.発足当初は勉強会の方向性やニーズなど構造について検討し,それ以降,前半は輪番で活動紹介と問題提起,後半は質疑応答や事例検討,ひきこもりとその支援のあり方や勉強会の運営について検討する構成とした.本報告は,勉強会の経過及び会議録を後方視的に検討したものであり個人情報を含まない.また公表に際し参加者から同意を得ている.
【結果】2023年1月現在まで13回実施,平均13名の参加.学会や研修会,論文等の啓発や個々の繋がりを経て,メーリングリスト登録者は当初比で倍増した.ひきこもり支援に関する困りごとは①生きづらさを抱える方への支援のあり方や定着方法②家族支援③アセスメント方法等に集約され,勉強会の意義については①孤立しがちなひきこもり支援に従事するOTのアイデンティティを補完する役割②実践報告と事例検討を通した学びの場③全国的なネットワーク構築,に集約された.また,医療や地域等,様々な場に勤務するOTが活動や困りごとを共有し意見交換できたことで,具体的な支援や地域資源等との連携の方略をイメージする機会となった.勉強会に今後求めるニーズや機能としては,地域活動への参画方法,啓発や講演等の協同企画,調査研究などが挙げられた.
【考察】ひきこもり含むマイノリティーな支援に携わるOTは,他職種・他業種チームの中で,OTのアイデンティティや他のOTとの対人凝集性を得られないことに葛藤し,時には無力感を感じる等バーンアウトになりうるストレス下にある中,対象者のWell-being向上のために信念を持って支援を続けている状況と推察される.勉強会は,日常の業務における不全感を吐露し,疑問や課題を気軽に相談できる場の提供を通し,日々の支援に反映できる具体的方略を得る,また支援者自身のメンタルヘルスの維持や孤立を改善する役割の一翼を担ったと考えられる.医療に在籍するOTにとっては医療・福祉領域の支援に,生活困窮者支援やひきこもり支援の観点を付加させることで,より効果的かつオーダーメイドな治療の提案・提供に繋がり,予防的観点で地域活動に踏み出す後押しにもなったと考えられる.今後は専門職としての技能向上に繋がる取り組みを付加させ,職業的アイデンティティを確立する一助としながら,生きづらさを持つ対象者の地域生活に貢献できる学びを得られる場としていきたい.