第57回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

精神障害

[PH-7] ポスター:精神障害 7

Sat. Nov 11, 2023 10:10 AM - 11:10 AM ポスター会場 (展示棟)

[PH-7-2] 児童思春期精神科医療における作業療法士の役割とは

南 庄一郎, 高 登樹恵 (大阪府立病院機構 大阪精神医療センターリハビリテーション室)

1.はじめに
 児童思春期精神科医療において,作業療法士は多職種チームの一員として18歳未満の患者の療育に携わっている.しかし,「児童・思春期精神科入院医療管理料」には作業療法士は専従配置の職員には含まれておらず,こうした診療報酬制度に筆頭らは児童思春期精神科医療に作業療法士が参画する意義に疑問を抱いた.そこで,本研究では多施設の児童思春期精神科医療に従事する作業療法士へのフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を通して,児童思春期精神科医療における作業療法士の役割を明らかにすることを目的とした.なお,本研究は当院の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
2.方法
 研究対象者は,1)全国児童青年精神科医療施設協議会の加盟施設に所属する作業療法士,または医学中央雑誌Web版で児童思春期精神科医療に関する作業療法の論文発表を行っている作業療法士で,2)児童思春期精神科病棟や児童思春期精神科デイケアなどで勤務している者とした.また,本研究のデザインは半構造化面接によるFGIを用いた質的研究とした.FGI はあるテーマに焦点を当てて抽出したグループにインタビューを行う手法であり,仮説の生成や現象をより深く理解する場合に有用である.本研究ではインタビューガイドを用いてWebによるオンライン FGIを実施し,Elwyn らのテーマ分析の手法を参考に逐語録からサブカテゴリーとカテゴリーを生成した.
3.結果
 研究対象者は12名(男性:6名,女性:6名,平均年齢:37.7±10.6歳,作業療法士の経験年数:平均14.8±10.2年,児童思春期精神科医療の従事年数:平均4.8±3.9年)であった.FGIは研究対象者を6名ずつに分けて実施し,インタビュー時間は平均134.2±8.8分であった.データ分析の結果,生成された〈サブカテゴリー〉は18個,【カテゴリー】は8個であった.本研究の結果,児童思春期精神科医療に従事する作業療法士は〈遊びを通して子どもと関係性を作る〉などの【子どもに対する作業療法士の関係性の作り方】を関わりの起点とし,〈子どもが行う作業(遊び)にこだわり大切にする〉などの【子どもに向き合う作業療法士の姿勢】を基に〈作業(遊び)を通して子どもの健康的な部分を引き出す〉などの【子どもに対する作業療法士のアプローチ】を実践していた.また,日々の臨床実践を通して〈子どもの成長に関わることができる〉ことなどの【児童思春期精神科OTのやりがい】を感じていた.そして,〈子どもの自己肯定感と自己効力感を向上させる〉ことや〈子どもの生きる力を育む〉ことが【児童思春期精神科医療における作業療法士の役割】であることが明らかになった.一方,〈診療報酬に作業療法士が明記されておらず収益に繋がらない〉ことや〈他業務と兼任で本来行うべきOTの職責が果たせない〉ことが【児童思春期精神科医療における作業療法の課題】であることも明らかになった.
4.考察
 本研究から,児童思春期精神科医療における作業療法士の関わりは,患者が楽しむことができ,やりがいや自己効力感を感じることができる作業(遊び)に焦点が当てられており,これを基に患者のより良い生活を目指す療育が展開されていると考えられる.対象となる患者との関わりに作業(遊び)を活かすことは,児童思春期精神科医療に従事する他職種には無い作業療法士の専門性である.一方,【児童思春期精神科医療における作業療法の課題】が明確化されたことに対して.今後は「児童・思春期精神科入院医療管理料」の診療報酬規定に作業療法士の職名が明記されることを目指して,児童思春期精神科作業療法の効果研究などを積み重ねていく必要がある.