第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-12] ポスター:発達障害 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PI-12-4] 幼児期の特別なニーズがある子どもの活動参加状況と感覚処理特性との関連についての予備的検討

五十嵐 剛1, 堤 奈緒2 (1.名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻, 2.公立陶生病院中央リハビリテーション部)

【はじめに】厚生労働省が提案する地域共生社会では障害児等への地域生活支援も重要な課題となっており,障害の種類や診断の有無に関わらず,学習,生活,遊びや対人コミュニケーション等に困難が生じている特別なニーズがある子どもも支援の対象に含まれる.特別なニーズがある子どもはニーズがない子どもと比較して感覚処理の偏りが強いことが指摘されており(Green, et al., 2016; Hirose, et al., 2022),これが地域生活に影響している可能性がある.特別なニーズがある子どもの地域生活支援を推進する上で,特別なニーズがある子どもの活動参加状況と感覚処理特性との関連を明らかにすることの意義は大きい.
【目的】特別なニーズがある子どもの活動参加状況と感覚処理特性との関連を明らかにすることを目的とする.
【方法】A児童発達支援事業所を利用している特別なニーズがある子どもの養育者18名を対象に,養育している子どもの地域生活における活動参加状況と感覚処理特性に関する無記名の質問紙調査を行った.なお,この事業所を利用している子どもに明らかな運動障害や聴覚,視覚障害がある者は含まれなかった.活動参加状況調査には日本版Preschool Activity Card Sort(PACS-JPN)に含まれている98種類のアクティビティ項目(igarashi, et al., 2020)を用いた.各項目に対する子どもの実施状況について「好んでやる」「やる」「嫌々やる」「道具や場所が無い」「やりたがらない・できない」「やらせていない」の6件法により回答を求め,「好んでやる」「やる」「嫌々やる」と回答された項目数を「実施数」として合計し,PACS-JPNの下位カテゴリー毎に算出した.感覚処理特性の調査には感覚プロファイル短縮版(SSP)を用い,合計スコアと下位セクションスコアを算出した.統計解析として,アクティビティ項目の実施数とSSPスコア間の関連をSpearmanの順位相関係数により検討した.危険率は5%未満を有意としBenjamini-Hochberg法による補正を行った.調査の実施にあたり対象者に研究依頼書,研究説明書,同意欄付きの調査票と返信用封筒を配布し,同意欄への記入がある調査票の返信をもって研究参加への同意とみなした.本研究は演者が所属する機関の生命倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号20-609).
【結果】18名中12名の養育者から,12名の子どもに関する回答を得た(回収率66.67%).養育している子どもの月齢は平均56.25±10.38ヶ月で,男児10名,女児2名であった.アクティビティ項目の実施数は平均73.67±9.62項目であった.SSP合計スコアは平均70.58±13.64で,分類システムにおいて8名が高い,2名が非常に高いに該当した.アクティビティ項目の実施数とSSPスコアの関連については,教育活動の実施数と低反応・感覚探究セクションスコアの間に有意な負の相関(rs=-.85, p<0.001),家庭での活動の実施数と低反応・感覚探究セクションスコア(rs=-.70, p=0.012),聴覚フィルタリングセクションスコア(rs=-.72, p=0.008)の間にそれぞれ有意な負の相関を認めた.子どもの月齢とアクティビティ項目の実施数間に有意な相関は認めなかった(rs=.18, p=0.57).
【考察】アクティビティ項目の実施数は子どもの月齢との間には有意な相関関係を認めず,SSPの下位セクションスコアとの間に有意な相関関係を認めた.特別なニーズがある子どもの活動参加状況は,個々の感覚処理特性に影響を受ける可能性が示唆された.本研究は対象者数が少なく,選択バイアスが生じている可能性もあるため,今後対象者を拡大して検討を重ねる必要がある.