第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-3] ポスター:発達障害 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PI-3-2] ウガンダ・アチョリ地区に暮らすうなづき症候群患者の作業遂行状況

井上 貴雄1, 坂井 紀公子2, 佐藤 靖明3, 武井 弥生4, 西 真如5 (1.大阪河﨑リハビリテーション大学, 2.金沢星稜大学, 3.長崎大学, 4.余市協会病院地域医療国際支援セ ンター, 5.広島大学)

はじめに:ウガンダ・アチョリ地区にはてんかん用症候群の一種,うなづき症候群を高頻度で発症する農村地区が存在する.うなづき症候群の発症原因は諸説あるが,彼らに対する各国からの支援は医療資源が十分でない中で拡大しつつある.今回,作業療法士として現地へ赴き,村の生活様式やかれらの生活実態を調査した.その中で支援や知識・周辺環境を活用しながら必要な作業に従事できている症例とそれが困難な症例に対し観察及びインタビュー調査を行ったので報告する.なお本研究はマケレレ大学倫理委員会の許可を得て実施している.
方法:本調査では2022年9月に著者らが村へ渡航し,村の通訳者を介して患者らに直接インタビューを行った.インタビューでは症状や生活状況,役割についてのオープンな質問とSOPI(Self-completed Occupational Performance Index)の生産的活動に関する項目を抜粋し構造化した質問を用いた.対象は20代男性の兄弟のA氏とB氏2名でそれぞれ1時間ほどのインタビューの後に村での日常生活場面を観察した.
結果:A氏は幼少期に発症したが早期から服薬を開始し,飲酒は避け毎日定期的に服薬継続している.親と一緒に毎日の農作業や掃除を行い,親が不調を観察し休ませるなど大きな発作を防ぎながら日々に役割を担っていた.生産的活動(農作業)に対するSOPIは8点であった.作業満足度のみ減点があったが家族の協力のもと各役割を遂行できている様子でった.B氏は幼少期に発症後服薬開始までに時間が経過し,飲酒機会を減らすことができず日々の発作も多く,できる仕事も多くない状況であった.最も求められる生産的活動(農作業)に関するSOPIの得点は4点であった.服薬や生活行動の乱れによる症状のコントロール不良が作業満足度や作業の統制に影響を与えている様子であった.
考察:これまでの支援の成果で村民には服薬方法やその重要性,リスク管理などの基本的な知識が理解されつつあるが,それらを活用・実践できているかどうかに関しては各症例において個人差が大きい様子であった.今回の調査からメディカルセッティングではなく地域環境においても疾患知識や対処方法を効果的に活用・実践できていれば本人にとって重要な作業への従事を可能にできる可能性が示唆された.今後は集団プログラムなどで知識やスキルの実践を促し,村民の生活場面における効果的な工夫を共有しながら多くの患者の作業満足度を向上させることが重要であると考えた.