第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-3] ポスター:発達障害 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PI-3-5] Williams症候群児と児童発達支援センター利用児のレジリエンスの特徴について

高橋 香代子1, 平田 樹伸2, 前場 洋佑1, 上出 香波3, 上出 直人1 (1.北里大学医療衛生学部, 2.埼玉医科大学総合医療センター, 3.駒沢女子短期大学保育科)

【はじめに】Williams症候群(以下WS)は,知的障害や注意障害などの症状を呈するといわれており(松村, 2013; 清水, 2016; 高橋ら, 2018),一般的な発達障害児と類似する症状を呈する.一方,WS児に特有な症状としては,過社会性や不安症に加えて,困った事柄に直面したときに上手く対処ができずに癇癪やパニックを起こすといった「レジリエンス」の低さなどがあげられる(高橋ら, 2021).つまり,WS児とその他の発達特性を呈する児との相違点を捉えることは,WSに特有なつまずきを明確にし,より具体的な支援につながると考えられる.そこで,本研究では,WS児と児童発達支援センター(以下児発)利用児のレジリエンスの特徴を明らかにし,作業療法の介入の一助とすることを目的とした.
【方法】WS児の親18名と児発利用児の親26名に対して,以下のアンケートを郵送して調査した.一般情報としては,年齢・性別と診断名の有無について調査した.レジリエンスの評価としては,幼児用レジリエンス尺度(長尾ら, 2008)を用いた.幼児用レジリエンス尺度は,気質(何事にも好奇心旺盛である),傷つきにくさ(友達に嫌なことを言われても気にしない),自己調整(トラブルがあったときに自分自身で解決方法を考え対処する)の3つの下位尺度からなり,点数が高いほどレジリエンスが高いことを示す.解析としては,レジリエンス尺度の平均と標準偏差を算出し,WS児と児発利用児との差をStudentのt検定を用いて検討した.解析には,JMP17.0 (SAS Institute Inc.)を使用し,有意基準はP<0.05とした.なお,本研究は倫理委員会の承認を得て実施した(2016-027).
【結果】WS児16名(女児10名,平均年齢5.6±2.23歳),児発利用児23名(女児6名,平均年齢4.6±1.1歳,全例診断名なし)についての回答が得られた(回収率88.9,88.5%).幼児用レジリエンス尺度については,気質はWS児(26.7±4.7)が児発利用児(22.5±5.3)に対して有意に高く(p=0.018),傷つきにくさはWS児(15.6±1.9)と児発利用児(15.1±2.9)の間に有意差はみられず(p=0.58),自己調整はWS児(10.5±2.5)が児発利用児(13.9±3.3)より有意に低い(p=0.002)結果となった.
【考察】レジリエンスの同年代健常児の平均は,気質19.4±6.6,傷つきにくさ15.5±3.7,自己調整18.7±3.2である(長尾ら, 2008).それに対して,WS児も児発利用児も異なる特徴を示すことが示された.特に,児発利用児は発達障害の診断をうけてはいないものの,健常児に比べると好奇心旺盛(気質)だが,切り替えは不得意(自己調整)であることが示された.さらに,WS児のレジリエンスの特徴としては,児発利用児よりも気質が高く,何事にも好奇心旺盛で初めての活動や人に対して肯定的であることが示された.これはWS児の特性である「過社会性」の表れであると考える.一方,自己調整については,児発利用児と比較してもさらに低く,困難な状況におかれた際に自分自身で解決方法を考え,気持ちを切り替えることが苦手であることが示された.
【結語】WS児のレジリエンスの特徴として,好奇心旺盛であることは長所だが,自己調整の苦手さは健常児や児発利用児よりも問題となりうることが示された.WS児に対して作業療法を行う際には,レジリエンスの長所と短所を理解した上で,様々な生活における困難さに対して自分なりに対処できるようになるための支援が必要であることが改めて示唆された.