第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-4] ポスター:発達障害 4

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PI-4-6] 視覚特別支援学校における作業療法士の介入について

久保田 絢女1, 伊藤 信寿2 (1.東遠学園組合こども発達センターめばえ, 2.聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部作業療法学科)

【はじめに】平成19年4月から,「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ,すべての学校において,障害のある幼児児童生徒の支援をさらに充実していくこととなった(文部科学省,2017).それにより,専門家チームの設置や関係機関との連携が図られ,特別支援教育に作業療法士が関与するようになった.筆者は,作業療法士として視覚障害の子とその保護者に介入する中で,作業療法の強みは,人と環境,そして作業遂行を考えられ総合的なアプローチができることと考えている.しかし,作業療法の分野においては肢体不自由児・知的障害児への作業療法介入の意義や有効性は過去に報告がされている一方で,視覚障害児に対する作業療法の報告は少なく,明確にされていない.そこで,視覚特別支援学校における作業療法士の介入の現状およびニーズを探ることで,作業療法士の職域を広げる方策を提示することができると考える.
【目的】視覚障害児教育における作業療法士の関与状況の現状,関与の内容,視覚特別支援学校から見た作業療法士に対する認識を調査し,現状を探る.
【方法】対象は,視覚特別支援学校,全67校に勤務する特別支援教育コーディネーター教員および養護教諭,幼稚部等の全教員を対象とした.各校の特別支援教育コーディネーター教員宛てに調査用紙を郵送し,調査用紙の返信をもって,同意を得たとみなした.調査項目は,学校への作業療法士の関与状況について,作業療法士への相談/協働経験,作業療法士の認知度,作業療法士の関与への意向について回答を得た.データ分析は,選択式解答欄は集計し,自由記述欄については,アフターコーディングの手法を用いて分析し,全体的な特徴や傾向を捉えた.尚,実施にあたり聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認を得ている(承認番号19096-01).
【結果】67校中21校より返信があり,31.3%の回収率であった.(重複した回答が3校あったため以下18校とする).作業療法士が関与している学校は18校中10校であった.回答者の属性は,特別支援教育コーディネーターが24名,その他の教員が45名であった.作業療法士への相談/協働経験の有無は,69名中29名(42.0%)の者が経験あり(経験あり群),36名(52.2%)の者が経験なし(経験なし群)と回答した(無回答4名).作業療法士の認知度では,作業療法士について「よく知っている」/「やや知っている」と回答した者は,経験あり群では28名/29名(97%)であり,経験なし群では27名/36名(75%)であった.視覚特別支援学校への作業療法士の関与意向についても,「非常にそう思う」「ややそう思う」と回答した者は,経験あり群では26名/29名(90%)であり,経験なし群では28名/36名(78%)であった.視覚特別支援学校における教員からの相談内容は,粗大運動,巧緻動作,日常生活動作,感覚に関すること,環境調整など多岐に渡っていた.視覚特別支援学校に作業療法士が関与する場合の課題については,予算や依頼先がわからない,継続がされにくいなどが挙げられた.
【考察】視覚障害児は,視覚単一障害だけでなく肢体不自由や知的障害との重複障害児が半数以上おり,教員は対応に苦慮している.結果で得られた教員からの相談内容は,従来の医療や療育の現場で行われている作業療法の視点と共通している.そのため,作業療法士は疾患ではなく作業に焦点を当てた介入を行うため,視覚障害児に対しても作業療法の視点が役立つことが示唆された.