第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-5] ポスター:発達障害 5

2023年11月10日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (展示棟)

[PI-5-6] 自閉スペクトラム症の子どもと保護者に対するロールプレイテスト評価表の再検討

柴田 貴美子1, 西方 浩一2, 栗城 洋平2 (1.埼玉県立大学, 2.文京学院大学)

【序論】自閉スペクトラム症児(以下,ASD児)に対する社会生活スキルトレーニングの効果測定は,対人応答性尺度などの質問紙を用いていることが多く,研究によって多様な尺度が用いられている(藤野,2013;西方ら,2018).専門家が社会的スキルを測定する方法には,面接法,行動観察法,ロールプレイ法があり(相川ら,2005),ロールプレイ法は実際のやりとりから社会的スキルを評価できる.我々は,佐々木(2006)が開発した改訂版ロールプレイテストを参考に,ASD児・保護者用ロールプレイテスト(以下,RPTCP)を開発した.RPTCPは練習場面を含む5つの場面を設定し,検査者とロールプレイを行い,RPTCP評価表(以下,評価表)を用いて社会的スキルを測定するものである.評価表は11項目から成り,評価者間信頼性は適度に一致し(κ=0.594),構成概念妥当性では3因子(第1因子「受信・送信技能」,第2因子「対処技能」,第3因子「スキルの主観的評価」)が抽出された(柴田ら,2018).評価表の因子構造は,改訂版ロールプレイテストと異なっていたため評価項目を見直し,また疾患の特異性を表しているのかを検討する必要があった.
【目的】本研究は評価表の評価項目を再検討し,発達障害児を対象にRPTCPを行い,構成概念妥当性と基準関連妥当性を検討することを目的とした(前所属機関倫理審査委員会承認番号:2017-0030).
【方法】研究者3名は,社会交流技能と目標スキルの児童自己評価尺度を参考に17評価項目を抽出し,従来の11項目と合わせて計28項目の評価表を作成した.その後,ASD児に特徴的で観察可能な行動を記述しているかを研究者間で検討し,最終的に20項目の評価表を作成した.発達障害児をもつ親の会等へ調査依頼をし,同意が得られた小学2〜6年生の発達障害児20名を対象に,RPTCP,小学生用社会的スキル尺度(以下,SS)を行った.また,対象児の保護者に親面接式自閉スペクトラム症評定尺度 (以下,PARS-TR),日本版SRS-2対人応答性尺度(以下,SRS-2)を実施した.RPTCPの様子はビデオ撮影し,研究者3名がビデオを見ながら評価表を用いて評価を行った.分析として評価項目の因子分析を行い,評価項目とPARS-TRおよびSRS-2の相関係数を算出した.
【結果】構成概念妥当性について,20評価項目の因子分析の結果,4因子が抽出された.第1因子は視線,表情,声の変化,身体表現:手遊び,身体表現:身体の向き,身体表現:移動と姿勢の変換,教示の理解,目的の理解の8項目を含む「課題の理解と非言語的技能」,第2因子は相手の認知,検査者からの問いかけに自ら応じる,スキルの実施状況,目的の達成,対処法の枠組みを提案する,対処法のバリエーションの6項目を含む「目標志向的コミュニケーション」,第3因子は設問内容を復唱する,独り言を話す,会話のキャッチボール,会話の内容の4項目を含む「会話への焦点化」,第4因子は自己効力感と不安感の2項目を含む「主観的評価」であった.基準関連妥当性について,各評価項目とPARSとの相関は認められなかったが,SSとは正の相関(r=.34〜.49,p<.05),SRS-2の下位項目である社会的認知,社会的コミュニケーション,興味の限局と反復行動とは負の相関(r=-.37〜.41,p<.05)が認められた.
【考察】再検討した評価表は4因子が抽出され,改訂版ロールプレイテストと類似した結果となった.また,評価表はSRS-2の下位項目と相関が認められ,部分的ではあるがASD児の特異性を示していると考える.以上のことから,再検討した評価表は一定の構成概念妥当性,基準関連妥当性を有していると考える.