第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-8] ポスター:高齢期 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PJ-8-2] 死亡退院者に対する精神科病棟の看護師・リハスタッフの介入視点

野口 僚子, 清水 竜太, 岩谷 清一 (医療法人社団永生会 永生病院リハビリテーション部)

【はじめに】精神科医療の地域移行施策に伴い精神科病床数は減少傾向にある.一方,75歳以上の患者の割合は入院患者のうち約37%,死亡退院患者は退院患者のうち約7%との調査(2014,厚生労働省)もあり,精神科病床で終末期を迎える患者は少なくない.しかし,そのような患者へのリハビリテーション(以下,リハ)職の果たす役割は不明確な点が多い.
【目的】当院精神科病棟で死亡退院した患者に対し各職種が重要視した介入視点を把握するため,当院で行われたデスカンファレンス(以下,DC)を後方視的に検討すること.また,それにより精神科病棟で死亡退院する患者への介入の質を向上すること.
【当院概要】548床のケアミックス病院.精神科病棟は閉鎖病棟1病棟と開放病棟1病棟の130床.
<精神科病棟の患者特性>平均年齢81歳,平均在院日数242日,死亡退院は退院患者のうち45.8%.ケアミックス病院ということもあり,多併存疾患の患者が大多数である.
<精神科病棟でのリハ>作業療法士(以下,OT)は6名で,精神科作業療法と疾患別リハを行っている.他に理学療法士(以下,PT)3名・言語聴覚士(以下,ST)2.5名を配置している.
<当院におけるDC>死亡後に行われるカンファレンスで,サービスの振り返り・質向上が目的である.精神科以外の病棟も含め,死亡退院者の一部に実施されている.
【方法】倫理的配慮として「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を参照とした.データ利用の同意は家族より得ており,データは匿名化された状態で取り扱った.
なお,2020年~2022年のDCを対象とした.
①2020年~2022年のDCから,精神科病棟(以下,精神科群)と精神科以外の病棟(以下,非精神科群)を同数抽出.精神科群の開催数が6件であったため,非精神科群は無作為に同数の抽出を行った.
②精神科群と非精神科群で,看護師(以下,Ns)・PT・OT・STの介入内容を分析した.計量分析ソフトKH coder3を用い,同異義語の統一などのデータクレンジング後に共起ネットワークで分析した.
【結果】12症例全例でリハ介入があり,死亡前のリハ中止症例はなかった.
<出現頻度上位語>精神科群・非精神科群に共通の語として,Ns.は状態・リスク・悪化,PTはベッド・ポジショニング,OTは本人があがった.精神科群のみの上位語として,PTは「離床」,OTは「家族・作業」,STは「食事・本人」があがった.
<共起ネットワーク>Ns.は,両群で頻出語の「状態」は家族・説明などの語と紐づけられていた.精神科群でのみ認めたグループ(以下,G)から,本人との会話等の共有が読み取れた.PTは非精神科群のみ疾患名で形成されるGがあった.OTは両方の群で余暇活動名を示すGが複数あり,精神科群のみで「精神状態・感情」を示すGが複数あった.STは精神科群のみで「認知機能」に関わるGがあった.
【考察】終末期でのチームアプローチは,各専門職が協働・連携しチームの中で果たすべき役割を分担する,インターディシプリナリモデル(相互関係チームモデル)を視座に入れたチームモデルが適しているとされている(2020,終末期ケア専門誌テキスト).当院の精神科における終末期でも,各職種が専門性を発揮しながら重複する役割を担っていることが分かった.また,非精神科群のみに特徴的な介入視点はほとんどなかった一方,精神科群のみに特徴的な介入視点が複数職種で見られ,精神科群ではより広い視点での介入がされていると考えられた.
【本研究の限界と今後の展望】当院精神科病棟で死亡退院した全ての事例への介入が分析された訳ではなく,分析対象も介入内容の一部に留まっている.今後データ数を増やして検討を行っていく.