第57回日本作業療法学会

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ポスター

援助機器

[PL-5] ポスター:援助機器 5

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PL-5-2] 障害者の支援機器開発においてOTがモニター評価に参加する際の業務に対する影響

内田 智子1, 石井 豊恵1, 森山 英樹1, 二瓶 美里2 (1.神戸大学大学院保健学研究科, 2.東京大学大学院新領域創成科学研究科)

【はじめに】支援機器は,障害者が自立した日常生活を送り,活動や参加を実現するために必要不可欠な道具である.その製品化の過程では,モニター評価を行うことが重要である.しかし,モニター評価は医療機関で勤務する作業療法士(OT)の主要な業務とは異なり,業務負担になることや必要なスキルが明確でないという課題も予測された.そこで,OTがモニター評価へ参加する際の業務への影響を調査した.本研究は厚生労働科学研究費補助金障害政策総合研究事業 JP21GC1001 の助成を受け,東京大学倫理委員会の承認後(21-252),対象者全員に説明し了承を得て実施した.
【対象】回復期リハビリテーション病棟に勤務するOT(回復期OT)5名(男性3名女性2名,経験年数17.6±8.3年)と急性期病院に勤務するOT(急性期OT)5名(男性4名女性1名,経験年数11.8±4.4年).全員モニター評価に関わる経験があった.【方法】対象者にはインタビューガイドを用いた半構造化面接を行った.質問はモニター評価に参加する際の「実施手順」「手順の理由」「費やす時間や労力」「負担感とその要因」「必要なスキル」「実施するメリット」についてであった.回答は,録音した上で逐語録を作成し,回答をコード化し,コードの類似性により関連する項目を,カテゴリー化した.【結果】「実施手順」では①上司,施設,対象患者の主治医および対象患者の許可を得た.②企業に対して,機器の目的と概要,適用する対象や障害について説明を求めた.③回復期OTは企業からの説明時間を勉強会とし,スタッフ全体で理解・共有していた.特に安全性や耐久性について詳細な情報を求めていた.さらに④他職種を含む複数のセラピストで実際に機器を使用し,安全性を確認していた.「手順の理由」では①職場のルールに従った手順であること②新規の機器を試す際のリスクを減らし安全性を保つためであった.「費やす時間や労力」は通常業務を100%とした場合10~30%増であり,「負担感とその要因」は①特に負担は無いとの回答が得られた一方で,②機器を理解するための時間や企業側との意思疎通,記録に負担を感じるとの回答もあった.「必要なスキル」は①対象者への適用・不適用を判断するために障害や能力の評価,動作分析,環境因子の評価・判断を行う能力,②機器の目的や性能の理解力があがった.また,③チームでの実施や企業との情報交換時にコミュニケーション能力が必要,④アイディアを提案する発想力が必要との意見もあった.「実施するメリット」では,①モニター評価に参加することで,新しい情報を早く知り得る,②人脈が広がることにより得られる情報の幅が広がる,③機器開発の流れを知れるなどに加え,④新しい機器の開発により医療・福祉業界に貢献できるなどの意見もあった.【考察】対象者全員がモニター評価において,「機器の安全性について重視し企業側に確認している」と回答した.業務負担は10~30%増であっても負担がないと答える一方で,時間を取られることや意思疎通のための連絡に負担を感じる例もあった.必要な能力では,「評価」「機能」「能力」「環境」に注目した,評価能力があがった.メリットとして「新しい情報を早く知り得る」「人脈を広げることにより得られる情報の幅が広がる」など業務に関連する新規情報があがった.本調査によりOTはモニター評価に対し一部負担感を感じながらも,専門職として高い意識を持って取り組んでいることがうかがえた.【結論】モニター評価にあたりOTは機器の安全性を最重要視した.一方モニター評価に費やす時間や職場外の人との連絡に負担を感じているため,評価方法や対応について改善する余地がある.