第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

MTDLP

[PM-2] ポスター:MTDLP 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PM-2-3] 自転車の使用再開により外出頻度が向上した一症例

山田 隆貴, 柊 直輝 (医療法人 橋本病院リハビリテーション部)

はじめに】「地域在住高齢者の自転車による外出頻度は余暇活動量や総活動量と関係性がある」(角田.2011)とあり,高齢者の外出機会を保つためには移動方法の確保が必要である.今回,訪問型サービスCの利用者に対して生活行為向上マネジメント(以下:MTDLP)を通して介入し,結果的に自転車運転を再開し,継続的に外出頻度が向上した症例を報告する.発表にあたり書面にて説明し,署名/同意を得ている.
症例紹介】80歳代女性.要支援2.退職後は旅行や地域住民との交流,読書等を行い過ごしていた.診断名は第4,5頚椎脊柱管狭窄症.保存的治療を行っていたが,ADL/IADLに支障をきたし,自転車での移動や買い物,地域コミュニティへの参加減少が認められ,地域包括支援センターの紹介で,他通所と本訪問を併用したサービス利用となった.
作業療法評価】下肢/体幹筋力低下,頸部ROM制限,バランス能力低下,易疲労性等がみられる.Barthel Index(BI):80/100点,Frenchay Activities Index(FAI)23/45点,E-SAS:27/120点.自宅内移動速度も低下し,手すりが必要.床からの立ち上がりにも時間を要する.基本的に自室で過ごすことが多く,運動習慣もない.自転車運転に対しては不安を感じており,漕ぎ出しの不安定さ,走行時のバランス不良を認めた.
MTDLP】合意目標を「①自転車でスーパーに行く(以下:①)(実行度:1/満足度:0)」とした.家族からは「安全に運転してほしい/趣味や運動習慣を身につけてほしい」と聞き取れた.介入計画は,介入1〜2ヶ月は生活上の頸部への不良姿勢の調査/指導,体幹/下肢を中心とした筋力増強,ADL/IADLの動作指導,夫への協力依頼(屋外散歩).介入2〜4ヶ月より自転車運転の評価,収納場所の提案,スーパーまでの道のり確認,運転練習,通所サービススタッフへの協力依頼.介入4〜6ヶ月には運動習慣の継続確認,買い物後を想定した運転練習,買い物の動作確認及び指導,1回買い物量の調整,を想定した.介入終了1年後に実態聴取を行う.
経過】介入1〜2ヶ月:歩行が徐々に安定し,枕の改善,頸部運動指導により頸部痛が改善した.また,床からの立ち上がりも円滑になり,夫と3回/週の散歩習慣が確立されつつある.介入2〜4ヶ月:自転車を楽に収納できる場所を確立し,通所サービス利用時も適切な運動が行えている.身体機能改善,移動/動作の速度向上により,ケアマネージャーもケアプランを再検討し生活全般に変化が現れる.介入4〜6ヶ月:日常生活は概ね安定し,運動習慣も継続.主体的に自転車を利用しはじめ外出頻度が増えた.同時に家族にも運転の様子を確認してもらい理解を得ている.5ヶ月目にはスーパーでの買い物が安全に遂行できることが確認され,習慣的に買い物を楽しむようになる.介入終了1年後:継続的に外出機会があり,地域コミュニティへも参加できている.
結果】「①(実行度:7/満足度:8)」と点数向上を認めた.BI:100/100点,FAI:33/45点,E-SAS:72/120点と向上した.運動習慣獲得し,ADL/IADLが円滑化されたことで自宅外への視野も広がった.自転車運転能力を再獲得した上で,社会参加増加を認め,介入終了後も継続的に外出機会が保たれている.
考察
「車/自転車/バイクを利用している人は,公共交通や送迎利用者に比べ,有意に外出日数が多い」(柳原.2015)と述べており,運転の可否が社会参加に関わる事が考えられる.元来,本症例は夫の車での送迎により買い物を行っていたが,自身で買い物に行けるようになったことで,自信を取り戻し,活動範囲の拡大に至ったと考える.また,MTDLPの活用により支援内容や時期,役割などを明確にすることで,対象者/家族/支援者と情報共有し連携できたことも重要であったと考える.