第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-1] ポスター:地域 1

2023年11月10日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-1-11] 科学的介護情報システム(LIFE)を活用した高齢者の生活期リハビリテーションの効果分析

山口 佳小里, 赤羽 学 (国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部)

【序論】社会の高齢化が世界的な課題となりつつあり,生活期にある要介護(要支援)高齢者の生活機能の維持・向上は重要な課題である.これに対してリハビリテーションが果たせる役割は大きいと考えられるが,エビデンスは十分確立されていない.今日,医療・健康領域においてデータベースの研究活用が進んでいる.本邦において,エビデンスに基づくケアを推進する目的で運用が開始された,科学的介護情報システム(以下,LIFE)は,介護保険下におけるリハビリテーションのプログラムならびに対象者の状態に関する情報を豊富に含んでおり,エビデンス確立のための活用が期待できる.データベースを活用した効果検証のためには,アウトカム指標ならびに暴露(介入)の同定,対象者の選定などが必須である.
【目的】先行研究からリハビリテーションのアウトカムとして用いられる指標を明らかにし,LIFEデータベースを用いた,要介護高齢者に対するリハビリテーションの効果検証において活用可能なアウトカム指標を同定する.
【方法】第一段階として,リハビリテーションの効果に関する文献レビューを行い,アウトカムとして用いられている指標を抽出した.検索エンジンは,健康・医療に関して,システマティックレビューを中心に信頼性の高いエビデンスを提供しているCochrane Libraryを用いた.キーワードを「rehabilitation」としたタイトル検索を行い,本研究目的に合致しない文献については除外した.選定した文献から,アウトカム指標,対象疾患・病期,介入内容などを抽出した.第二段階として,文献レビューにより選定したアウトカム指標とLIFEに含まれる指標を照合し,分析において有用なアウトカム指標を選定した.さらに選定した指標を,国際生活機能分類(以下,ICF)に則って分類し,どのようなリハビリテーションの効果検証が可能か検討した.なお,本研究は公開された文献・資料のみを対象としており,倫理審査の対象とならない.
【結果】先行研究レビューに関して,85件のシステマティックレビューが検出され,目的に合致した74件からさらに,高齢者を対象としたリハビリテーションに関するシステマティックレビュー8件を選定した.これらのレビュー論文に関して,対象としている疾患は,骨折,切断,慢性腰痛(該当件数はそれぞれ4,1,1件)で,疾患を特定しない高齢者を対象としたものが2件あり,このうち1件は生活期における要介護高齢者が対象であった.介入として,最も多かったものは多職種連携リハビリテーションであった.アウトカム指標に関しては,ADL自立度,QOL,死亡率など,計20の指標がメタアナリシスに使用されていた.抽出されたアウトカム指標とLIFEに含まれる指標を照合したところ,ADL自立度,IADL,歩行,疼痛,社会参加(就労),心理的機能(抑うつ)に加え,複数の身体・認知機能がLIFEに含まれていた. ICFカテゴリーに関しては,心身機能・身体構造,活動,参加の全てにおいていずれかの指標が該当した.
【結論】ICFの全てのカテゴリーにわたる,リハビリテーションに関する複数のアウトカム指標がLIFEに含まれており,LIFEを活用して幅広くリハビリテーションの効果を検証できる可能性が示された.今回の文献レビューでは,結果的に限られた領域(疾患等)の先行研究のみが対象となったことから,より対象を広げてレビューを行う必要がある.