第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-1] ポスター:地域 1

2023年11月10日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-1-5] コロナ禍における作業を通した健康支援を目的とする啓発資料の活用状況に関するアンケート調査

川又 寛徳, 五百川 和明, 澄川 幸志, 藤田 貴昭 (福島県立医科大学保健科学部作業療法学科)

【序論】福島県作業療法士会(以下,福島県士会)は,コロナ禍で行動制限や生活様式の変化を受けた福島県民の作業を支援するため,作業を通した健康支援を目的とする啓発冊子『#おうち時間見直してみませんか?』を作成した.しかし,福島県士会の作業療法士(以下,福島県士会員)が同啓発冊子をどのように活用しているかは不明であった.
【目的】本研究の目的は,福島県士会員が啓発冊子を活用したか否か,その理由について検証することであった.
【方法】令和4年3月,福島県士会員974人を対象に,『#おうち時間見直してみませんか?』の活用の有無,その理由に関してGoogleフォームを用いてwebアンケート調査を実施した.アンケート結果は単純集計を行い,「コロナ禍における作業療法士もしくは福島県士会の役割に関して,あなたのお考えをお聞かせください」の自由記載の回答データは,KH Coder3.Beta.07を用いてテキストマイニングを行い,頻出語および共起ネットワーク分析を行った.本研究は福島県士会理事会の承認を得て実施した.
【結果】アンケートの回収率は26.7%であった.「福島県士会のホームページまたは冊子で『#おうち時間見直してみませんか?』を読んだことがありますか」の問いに対して,「はい」と回答したのは33.1%であった.そのうち「『#おうち時間見直してみませんか?』を活用しましたか」の問いに「はい」と回答したのは27.9%であり,その多くは通いの場等のサロン活動で活用していた.「『#おうち時間見直してみませんか?』を活用しなかった理由をお聞かせください」の問いに対する回答で多かったのは,順に「使う機会がなかった」「使い方が思いつかなかった」であった.「コロナ禍における作業療法士もしくは福島県士会の役割に関して,あなたのお考えをお聞かせください」に対しては,「今までできたことができない,制限がかかるなど,マイナス方向での活動になってしまうコロナ禍で,また別な視点というか,コロナ禍を上手に付き合う視点など,生活や活動のヒントを発信できる職業団体なんだと,『#おうち時間見直してみませんか?』が出された時,改めて感じました」等の意見が得られた.頻出語(出現数)の上位5つは,「活動(70)」「生活(69)」「コロナ禍(42)」「作業療法(37)」「支援(36)」であった.共起ネットワーク分析では,8つのカテゴリ(活動や参加を支援する作業療法士の役割の認識,心身機能の維持と低下の予防,作業に関する情報や機会の提供,閉じこもり・介護予防,サービス提供時の感染対策,『#おうち時間見直してみませんか?』の活用,自宅での過ごし方,影響を受ける高齢者への心配)が抽出された.
【考察】アンケートの回収率や,回答結果から,『#おうち時間見直してみませんか?』の福島県士会員への啓発効果は十分でなかったことが示唆された.所属施設におけるコロナ対応に追われていることが一因と考えられた.活用しなかった理由の回答結果から,どのように活用すればよいのか,その活用案もあわせて提示することが有効であった可能性がある.しかし,『#おうち時間見直してみませんか?』を活用した福島県士会員の回答から,サロン活動等で役立てた報告等も散見され,今後発信方法を工夫することで,コロナ等災害下において啓発資料を有効に活用できる可能性が示唆された.また,テキストマイニングの結果から,コロナ等災害下において,活動や参加を支援する福島県士会員の役割の認識を整理することができ,この成果を福島県士会運営に役立てることが今後の課題である.