第57回日本作業療法学会

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[PN-10] ポスター:地域 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-10-1] 地域支援を行う作業療法士の地域資源評価の視点

松尾 真輔, 有川 真弓 (千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【はじめに】一部の先駆的な作業療法士(以下,OT)は,リハビリテーション専門職としての視点とこれまでの地域支援の経験から,生活の視点で地域の人材資源や環境資源(以下,地域資源)を評価し,支援を行っている.地域資源の評価には定型的な評価方法はなく,多くの場合作業療法士の知恵と経験によって行われている.これらの作業療法士が経験から行っている評価の視点を集積し整理することで,地域支援の経験が少ない作業療法士でも簡便に地域資源を評価できるチェックリストを作成できるのではないかと考えた.
【目的】本研究の目的は,OTが地域支援を行う際に,評価をしている地域資源を整理することである.
【方法】先行研究を参考に作成したインタビューガイドに沿って,地域支援に携わるOTにアセスメントの視点,確認すること,地域資源の活用方法等を面接で聞き取った.インタビューの所要時間は1名あたり1時間程度であった.文書と口頭にて説明し同意を得て行った.インタビューはICレコーダーで記録し逐語録にした.データは切片化したのち,類似性に基づき分類,グループ化して,カテゴリーを作成した.なお,本研究は千葉県立保健医療大学研究等倫理審査委員会の承認(2018―21)を得て実施した.
【結果】対象は地域支援に携わるOT21名で北海道・東北地方4名,関東地方8名,四国地方2名,九州・沖縄地方7名であった.OTの活動領域は,高齢者施設,障害者施設,訪問支援,就労支援,相談支援,児童福祉,特別支援教育など多岐にわたっていた.面接データから評価している地域資源を抽出したところ,378のデータが抽出された.それを分類した結果,(1)地域背景を理解する,(2)地域における団体や組織を理解する,(3)地域における人的資源を理解する,(4)地域における活動の場を理解するの4つのカテゴリーに分類された.地域背景を理解するでは「歴史的文化背景を把握する」「地域の統計データを把握する」「地域産業を把握する」「地域情報を得る手段を把握する」の4つのサブカテゴリーで構成された.地域における団体や組織を理解するでは,「地域にある団体や組織を把握する」「地域にある団体や組織の特性を把握する」の2つのサブカテゴリーで構成された.地域における人的資源を理解するでは,「地域人材の有無を把握する」「地域人材の個別の特性を把握する」「専門職の特性を把握する」の3つのサブカテゴリーで構成された.地域における活動の場を理解するでは,「日常生活で活用できる場を把握する」「地域の行事やイベントを把握する」の2つのサブカテゴリーで構成された.
【考察】 地域支援を行うOTは,地域の産業や歴史的文化的背景,人口特性等の統計データなどの地域特性を理解していた.その上で,地域にある企業や住民団体,公的団体などの地域組織と地域にある専門職や地域住民などの地域人材を把握し,地域の行事やイベント,日常的な生活活動の場の活用につなげていることがわかった.これまでに収集した調査データでは,地域や領域に偏りがあるため,さらに調査対象を拡げて分析することにより,地域資源を評価できる精度の高いチェックリストの作成を目指したい.