第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-10] ポスター:地域 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-10-4] サッカーチーム「クリアソン新宿」との連携から見えた作業療法の可能性

加藤 駿一1, 岩舘 直2, 大﨑 淳矢2, 峰尾 隼人3, 高橋 章郎1 (1.学校法人 日本教育財団 首都医校高度作業療法学科, 2.クリアソン新宿選手兼株式会社Criacao地域共創室, 3.株式会社Criacao地域共創室)

【はじめに】Jリーグは1993年の発足以来「地域に根ざしたスポーツクラブ」を核としたスポーツ文化の振興活動としてJリーグ百年構想を掲げている.この中では「観る」「する」「参加する」.スポーツを通して世代を超えた触れ合いの輪を広げること.「する」「見る」「支える」,スポーツの楽しみ方も人それぞれです.と示されており,これは利用者のニーズに沿った活動と参加に資する作業療法の実践(中村,2020)と共通性がある.2022年10月より,東京都新宿区にありJリーグ百年構想クラブ認定されているJFL所属クリアソン新宿(以下クリアソン)と連携し活動する機会を得た.今後も連携していく予定である為,独自アンケートをもとに株式会社Criacao(以下(株)Criacao)とクリアソンが医療福祉領域にどのような考えを持っているかを調査した.結果から今後の作業療法の可能性について検討を行ったため報告する.
【目的】(株)Criacaoとクリアソンに対し医療福祉領域への考えを調査し,作業療法の可能性について検討すること.なお,倫理的配慮として本調査に関して目的と内容を書面にて説明しアンケートの回答をもって同意とした.
【方法】対象は(株)Criacaoとクリアソンに所属している計78名.設問は1)年齢 2)性別 3)会社での主な役割,4)〜7)は医療福祉分野に対して働きかける際どのような,4)強みがあるか 5)弱みがあるか 6)機会が必要か 7)脅威があるか,とした.分析は1〜4)平均値算出or単純集計,4〜7)KJ法で分析を行った.KJ法はOTRらが中心に得られた回答を単位化,小・中・大チームの順で編成し,(株)Criacaoとクリアソンの方と齟齬がないかを確認した.
【結果】回答数は26件で回収率は33.3%.以下,設問番号に沿って記載し3)は複数回答を含み,4)〜7)は大チームのみ記載.1)30±5歳 2)10:0(男:女) 3)選手・コーチ24名(92.3%),会社経営・運営・その他10名(38.4%) 4)「生活内に非日常を作ることができる」「交流,心身の健康へアプローチ」「地域での選手との触れ合い」「ノーマライゼーション」「他企業・他団体とのつながり」5)「障害福祉への理解や対象者との接点が少ない」「ビジネスモデルの構築」「様々な人が試合観戦できる環境の構築と成果」6)「障がい者と交流を持てる場」「医療福祉分野について知る機会」「試合会場に来てもらう機会」「企業間連携の強化と可視化」7)「互いに受ける心理的負担」「特にない」「外部から受ける影響」「障がい者の方からの情報収集と発信方法」であった.
【考察】本調査は医療保険分野から離れた企業・スポーツチームとの連携から成り立っていた.今回(株)Criacaoとクリアソンの強み,弱み,機会,脅威が明らかになった.強みを活かす上でも医療福祉領域に対して明らかになった機会の創出等にOTRは寄与できると考える.具体的には「障がいのある方をサッカー場までアクセスすること」である.つまり対象者やスタジアム環境等の評価を行いサッカー観戦という作業へ安全に繋げるという役割である.また選手等へ医療福祉についての教育をOTRが担うことは,選手が地域活動を行う際の一助となり得る.(株)Criacao・クリアソン・Jリーグに想いはある.しかし,超高齢社会&様々な特性を持ち合わせた方々が集うためには,医学的な背景を持ち生活領域へ具体的なアプローチを行うことが出来るOTRの動きが重要となる.地域社会において誰一人取り残さない社会の実現のために「作業療法・作業療法士」の関与は期待されており果たすべき役割は非常に重要となる.今回の結果を踏まえ,教育機関である当校は,このような実践を学生と共に行い今後の作業療法の更なる発展に繋げていきたい.