第57回日本作業療法学会

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[PN-10] ポスター:地域 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-10-7] 北海道今金町療育相談事業における作業療法士の役割と今後の課題について

大石 朋裕1, 大井 雅人1, 垣本 まき子2, 小西 貴大2, 菱田 明奈2 (1.函館中央病院リハビリテーション科, 2.今金町子ども発達支援センター)

【はじめに】
発達障害児の早期療育が重要であることは周知の事実であるが,作業療法士(以下OT)の関わりは都市部の医療機関や療育センターが中心となっている.現在,高齢者における地域活動でOTが活躍しているが,発達支援の分野においてもOTの必要性は高い.しかし,都市部以外での地域ではOTによる支援が届かない現状がある.北海道今金町は発達支援に関わるOTがいない地域である.そのため,今金町は発達支援の充実を図るため各専門職の派遣事業を積極的に活用しており,我々はOTとして参加している.今回,当院リハビリテーション科と今金町子ども発達支援センターとで,本派遣事業における課題と今後必要な取り組みを考察したので報告する.なお本報告の情報は今金町教育委員会からの提供である.
【今金町子ども発達支援センター(きらきらクラブ)における療育相談事業の概要】
北海道今金町(人口5,228人)では隣接するせたな町との広域利用施設として子ども発達支援センターを設置している.スタッフは指導員4名で構成され,対象年齢は0〜18歳で現在88名利用している.保健師や認定こども園スタッフとの連携の他,地域資源の充実を図ることを目的に各専門支援機関と連携し積極的に活動している.
【派遣事業の内容】
当院は平成31年度より本事業に参加している.年2回当院OTが訪問,1度の開催で対象児は1から4名であり,これまでに9名参加した.支援場所はセンター内が中心であり対象児は今金町周辺地区より参加された男児6名,女児3名,平均年齢は4.4歳であった.対象児のピックアップ,訪問前と実施前の事前情報の共有,実施(児の評価とプログラムの実施,家族助言),振り返り(センタースタッフ,保健師,こども園スタッフ)の流れで実施する.
【成果と課題の抽出】
支援センタースタッフ4名,当院OT4名へ成果と課題をアンケートと自由記載にて聴取した.本事業にてスタッフが求めていることは具体的な運動の見立てと支援プログラムの専門的見地であり,当院OTは対象児や家族,支援者を含め運動面の必要なプログラムを医学的な視点で助言すると回答している.満足度は支援センタースタッフ 9.5/10点.当院OT4.8/10点,遂行度はそれぞれ9.5/10点,4.8/10点となっている.課題として,実施回数や時間が十分にとれない,対象児へのアフターフォローの不足がある.またOTは家族やこども園など集団での生活支援について不十分であると回答している.今後の取り組みは実施前後の情報を継続して共有し合える連携が必要と回答している.
【今後の課題と取り組み】
本事業に対するOTの役割は双方で共通理解されていると考えられる.しかし,OTの遂行度は4.8点となっている.理由として,当院OTは院内にて函館市内のこどもを中心に支援しているため発達支援専門医が関わっていない郊外地域での支援経験が浅く,一度の関与で生活状況への具体的助言等の支援が不十分であるからと思われる.センタースタッフからは実施回数が少ない,一人に対する時間が取りにくいとの回答があり,それもまた支援の難しさとなっている.今後の課題である情報共有についてはセンタースタッフ,当院スタッフは共に日々各業務に追われており,お互い時間の確保が難しい現状がある.そのため短時間で情報共有の質を高めるために対象児に対する重要項目を抽出できるよう明確な役割分担や専門的な視点の強化に取り組んでいく必要がある.今後,OTの派遣事業実施前から実施後も継続した支援を行うために相互のスキルアップと一層の連携強化が必要であると考える.