第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-11] ポスター:地域 11

2023年11月11日(土) 15:10 〜 16:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-11-9] デイサービスにおける自立支援・重度化防止の取り組みとその効果に関する文献レビュー

山中 信1, 植田 拓也1, 新井 武志2, 安齋 紗保理3, 柴 喜崇4 (1.東京都健康長寿医療センター研究所東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター, 2.目白大学保健医療学部, 3.城西国際大学福祉総合学部, 4.福島県立医科大学保健科学部)

【はじめに】
高齢者の在宅生活継続の基幹となる通所サービスでは,適切なアセスメントに基づく総合的な支援が求められており,介護予防の取組を機能強化するための通所・訪問介護事業所等へのリハビリテーション専門職等の関与を,厚生労働省も促進している.また,デイサービスにおいてADL低下予防,重度化予防を図るうえではPT,OTの配置の必要性が示唆されている(林ら2016)など,リハビリテーション職への期待は高まっている.一方,デイサービス利用者に関する事業所への調査では,60%以上の事業所が「利用者の状態変化の分析」を「直近1年以内に実施していない」ことが明らかとなっており(みずほ情報総研株式会社 2018),評価と分析は不十分であるといえる.そこで,本研究では,デイサービスにおける自立支援・重度化防止の現状について,どのような支援を行い,どのような効果があったのか知見を集約することを目的に文献レビューを行った.
【方法】
データベース検索として,医学中央雑誌web版,J₋stageを使用した.検索の対象期間は,介護保険法が施行された2000年から2023年2月8日までとした.検索式には「(通所介護orデイサービス)and自立支援」「(通所介護orデイサービス)and重度化予防」を用い,「原著論文,抄録あり,会議録除く」で限定し検索を行った.データベース検索後,病院,大学の紀要等を除外し全国誌に掲載された論文を選抜した後,通所介護サービスの利用者を対象とした報告を選抜し,報告の内容が研究の目的に合致するかを判断した.対象論文は,著者の職種を分類後,デイサービスにて利用者に「行った支援」と「アウトカム」を抽出し,それぞれについて国際生活機能分類(以下,ICF)を参考に,「心身機能・身体構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」の5つのカテゴリに分類した.
【結果】
Web検索により特定された論文は312編で,この312編の論文の中からスクリーニングを行った結果,最終的に10編となった.デイサービスにおいて自立支援・重度化予防のため利用者に「行った支援」と「アウトカム」を抽出し,ICF分類した結果は以下の通りである.「行った支援」は,心身機能・身体構造が5編,環境因子が5編,個人因子が3編,参加が2編,活動が1編分類された.「アウトカム」は,活動が6編,心身機能・身体構造が4編,個人因子が4編,参加が2編,環境因子が1編分類された.著者の職種は,看護師が4編,介護福祉士が2編,理学療法士が1編,ケアマネージャーが1編,不明なものが4編であった.
【考察】
 ICFを用いた分類により,「行った支援」「アウトカム」ともに参加に言及した論文は2編のみであり,その他の分類と比較すると参加に関する観点が少ない現状を示唆する結果であった.デイサービスの役割は「機能の回復」ではなく「生活の回復」,さらには生きがいを掴む「人生の回復」に重点を置く必要がある(厚労省 2017)とされており,利用者の社会参加といった観点から支援を行っていく必要性が示唆された.職種に関しては,看護師,介護福祉士で過半数を占めておりリハビリテーション専門職は理学療法士の1編のみであった.通所介護事業所において,自立支援・重度化予防に必要なリハビリテーション専門職が機能訓練指導員としての配置されている事業所は15.9%(三菱UFJリサーチ&コンサルティング,2018)と非常に少なく,デイサービスでの自立支援・重度化予防に向けて,リハビリテーション職種の参加および実践論文が増えていくことが望まれる.
※本研究はJSPS科研費 JP22K01950の助成の一部を受け実施した.